はじめに

東海地方を地盤に、関東と関西でも店舗を展開するステーキチェーン「ブロンコビリー」が好調です。2018年上半期の業績は、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比3割増で着地しました。

しかし、株価の動きが冴えません。6月下旬に付けた年初来高値に比べて、足元の株価は3割弱も下落。好業績とは正反対の値動きとなっています。

13年連続で経常利益率12%以上を記録している“外食産業の優等生”に何が起きているのでしょうか。7月25日に開かれた同社の決算説明会でのやり取りから、原因を分析してみます。


ランチ需要が好業績を牽引

ブロンコビリーが7月13日に発表した2018年度第2四半期(1~6月期)決算は、売上高が前年同期比18.0%増の111億円、営業利益が同30.8%増の14.1億円でした。好業績を牽引したのが、ランチ需要です。

昨年9月に、平日限定のランチを導入。「チキンステーキ」や「ビリーハンバーグ」という、新規客にとって“入り口”となる商品の価格を値下げ。さらに、 看板の1つでもある店内調理のサラダバーも、388円から324円に価格を改定。メイン料理とサラダバーのセット(ごはん、スープ付き)を1,165円から1,058円に改めました(いずれも税込み)。

その後も、同年12月に、和牛の血を引く米国産のワンランク上の商品「和縁」や、女性客をターゲットにしたハンバーグ用のチーズソースを導入。さらに今年3月には、家族でステーキやハンバーグ、チキンを分けあえる「ハッピーコンボ」や、赤身肉ブームに乗った「炭焼きUS赤身ステーキセット」といった新メニューを投入しました。

これらの効果もあり、昨年9月から今年5月までの9ヵ月間、ランチ時間帯の既存店売上高は前年同月の105%超をキープ。期初時点で会社側は上半期の営業利益を13.2億円と予想していましたが、それを上回る実績を上げることができたのです。

権利落ちに6月失速がダメ押し

しかし、株式市場からの評価を表す株価は、6月22日に年初来高値4,850円を付けてから急落。決算説明会が開かれた7月25日の終値は3,550円と、直近のピークから26.8%も下落しています。

同社は、6月末時点の株主に対して中間配当のほかに、株主優待として自社店舗で使えるお食事券を送っています。その権利が落ちた6月27日以降、ジリジリと値下がりしていたところにダメを押したのが、第2四半期、特に6月の既存店の失速でした。

外食チェーンの収益の源である既存店売上高は、5月まで前年を上回って推移していましたが、6月は前年同月の95%まで低下しました。背景にある要因は2つ。深夜営業の短縮と、販促キャンペーンの不振でした。

前者については、6月1日から全店舗を23時閉店に変更。これによって、既存店売上高は2~3ポイント下落することになりました。ただ、23時以降はもともと来店客数も少ない、生産性の低い時間帯。その時間分の人件費も削減できるので、採算的にはトントンになるといいます。

むしろ、株価に暗い影を落としたとみられるのは、「お客様大感謝祭」という販促キャンペーンです。昨年も同様に2割引きのキャンペーンを開催していましたが、昨年が1週間ぶっ通しで全商品を対象にしていたのに対し、今年は週末3日間を2回、メニューも3つに限定して割引を実施したのです。

会社としては「得意分野に絞り込んだ」(竹市克弘社長)戦略でしたが、「お客様からすると、わかりにくかった。成功したとはいえません」(同)と認めざるをえない結果となりました。

9月に全品20%オフキャンペーン

この販促キャンペーンでは、次回来店時の割引が通常よりも高い確率で当たるスクラッチカードなどを配布しており、7月以降の集客に向けた施策という側面もあります。そんな下半期への試金石が不本意な結果に終わったことに、株式市場は厳しい評価を突きつけました。

それでも、竹市社長は挽回に自信をのぞかせます。まず、わかりにくかったという反省のある販促キャンペーンについては、昨年同様、全品20%オフの形式で9月にもう一度開催するといいます。

さらに中期的な施策として取り組んでいるのが、ディナー時間帯の商品力向上。平日限定の値下げによって持ち直したランチ時間帯とは逆に、ディナー時間帯は上半期中も前年の既存店売上高を割り込む月がありました。今度はこちらをテコ入れしようというわけです。

具体的な内容はまだ明らかにできないといいますが、「素材の調達から商品の調理まで自社で手掛けているので、その分、いろいろな部分で作り込むことができます。調達力と加工力の掛け合わせによって、ディナー商品の価値を高めていきます」(竹市社長)。

すでに商品の方向性は固まっており、今は食材調達の準備を進めている段階。「カンフル剤として20%オフのキャンペーンを打っていく中で客数をキープし、次の施策(ディナー商品の商品力向上)をぶつけていきたい」と、竹市社長は意気込みます。

市場の評価を良い意味で裏切り、業績だけでなく、株価も再び上昇気流に乗せることができるのでしょうか。この下半期はブロンコビリーの真価が問われる局面となりそうです。

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