「まさに小売りの感性、そしてデザイン。詳細を聞いてこれはいいなあと感じました。ワクワクすることが今日から始まっています」

小売り・カード事業大手の丸井グループが証券事業に乗り出します。7月26日、東京証券取引所で開かれた会見に同席したコモンズ投信の渋澤健会長は、このように期待感を語りました。

丸井グループがイチから手掛ける証券会社、中身はいったいどのようなものでしょうか。


日本初のカード決済で投信購入

発表会見会場となった東証のモニターに大きく映されたのは、「tsumiki」の文字。丸井グループが9月から口座開設をスタートさせるのは「tsumiki証券」という、積み立て投資信託専門の証券会社です。

社名の由来は、積み立て投資専門の証券会社として、「(自分の資産を)こつこつ・ゆっくり・自分のペースで積み上げていく」という積み木のイメージ。tsumikiのロゴも優しいフォントで、会見場のデザインにも淡いミントカラーが使われるなど、金融のお堅いイメージとはかけ離れた“カワイイ”雰囲気です。

こうしたデザインに代表されるようにtsumiki証券でこだわっているのが、投資初心者に徹底的に寄り添うこと。その具体的な方策の1つが、日本で初めて導入したという、カード決済で投資信託が買える仕組みです。

毎月の購入金額は3,000円から5万円の間で設定可能。カード決済は丸井グループが発行するクレジットカード「エポスカード」限定で、1回払いのみですが、年間の積立金額や期間に応じたエポスポイントが付与されます。具体的な付与条件は現在検討中で、0.1~0.5%のポイントを還元する計画です。

オマモリで投資の存在を身近に

カード決済と並ぶtsumiki投信のもう1つの特徴は「オマモリ」です。形は商品タグのような、キーホルダーのような。シリコン製でプニプニとした触り心地に癒されます。

このオマモリに入っているQRコードを読み込むと、初回はtsumiki証券の口座開設手続きへと進みます。そして運用開始後にはQRコードから運用状況が確認できるサイトに飛べる、という仕組みです。

 カラフルな「オマモリ」 

ビジネスデザインを手がけたのは、デザインオフィス「nendo」の佐藤オオキ代表。「人は目に見えないもの、体感できないものには恐怖を感じます。ですので、安心して続けていただけるよう、金融商品をあえて見える化して、手に取れる形にすることしました」と、オマモリの開発経緯を話しました。

初心者にとっては、投資を始めてみたはいいものの、購入した金融商品について普段の生活の中で考える機会は、それほど多くないもの。そこでオマモリを常に身の回りに置いておいてもらうことで、投資をより身近に感じてもらおうという狙いもあります。

品ぞろえも初心者に配慮

初心者への配慮は、商品ラインナップからも見て取れます。tsumiki証券で販売する商品は下表の投資信託4本のみ。いずれも「つみたてNISA」の対象となっている投資信託です。

つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準で長期の積み立てに適していると金融庁がお墨付きを与えている銘柄。つまり、投資初心者でも6000本以上ある国内の投資信託の中から相対的に安心して購入できる商品というわけです。

tsumiki証券がターゲットとするエポスカード会員は、現在会員数が約650万人。そのうちの約半数が20~30代で、約7割が女性だといいます。こうした層はこれまで投資に馴染みがなく、最初の一歩がなかなか踏み出せない傾向があります。そんな悩みに対応するため、丸井の店舗で顧客のサポートや投資セミナーも開催する予定です。

丸井グループの青井浩社長は「エポスカードを通じて投資信託を買っていただければ、そのカードが長期にわたりお客様のメインカードになり、本業(小売り)にも波及できる」と、証券単体ではなくグループ全体での事業性を強調します。

10年後に預かり資産1兆円が目標

まさにグループの総力を挙げて、顧客の取り込みを進めようとしているtsumiki証券。5年後をメドに黒字化、そして10年間で顧客数100万人、預かり資産1兆円を目指すとしています。しかし、事業としての収益化はそう簡単ではなさそうです。

エポスカードを使った購入では、投資に対する融資にならないよう、支払いは1回払いのみとなっています。販売時に金利や手数料は発生しないので、tsumiki証券としての収益源は運用会社と分け合う信託報酬のみとなります。その信託報酬も、4本ともおよそ1%ですので、運用会社との折半ではごくわずかです。

6月に日本銀行が発表した「資金循環統計」では、2017年度の家計の投信保有残高は約73兆2,000億円と、直近のピークである2014年度の約81兆円から減少傾向にあります。「貯蓄から投資」の流れが足踏みする中、tsumiki証券は新風を巻き起こすことができるでしょうか。

金融商品という新たなジャンルの商品を、これまで小売りで培ってきたノウハウによってどう魅せていけるか。丸井グループの販売力が試されています。

(文:編集部 瀧六花子)