はじめに
8月10日には、重要な統計であるわが国の4~6月期の国内総生産(GDP)が内閣府から発表される予定です。
今回は、経済を把握するうえで私が重要と考えること、GDP統計の意味、そして8月10日に発表されるGDPが市場に与える影響について、お話しできればと考えます。
経済指標を読む時の2つのポイント
経済の状況を表す指標(経済指標)には、皆さんがご存じのように、さまざまなものがあります。しかし私なりの解釈では、さまざまな経済指標は結局のところ、(1)経済がどれくらい成長できそうなのか、(2)物価の上昇率はどの程度になりそうなのか、という2点を予測するために利用されるものです。
すなわち、この「成長」と「物価」という2つのポイントは、皆さんがビジネスや投資に携わるうえにおいて、把握しておくことが不可欠なポイントであると私は考えています。
なお、この2つの要素の次に重要なものとしては、(3)いわゆるバブルの有無(経済などの過熱している部分)、(4)資産価格などがあると考えます。
そもそもGDPとは何なのか
それでは、成長が重要な要素であったとして、成長はどのように計測されるのでしょうか。これに対する答えとして、GDPが最も基本的なデータであることに疑義を挟まれる人は少ないと思われます。
GDPは「一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額」と定義されます。なにか、付加価値という言葉がわかりにくいですね。
まず、GDPにおいては、支出、生産、分配という3つの定義が存在します。そして、これらの定義によるGDPは同じ値となり、「三面等価の原理」とも呼ばれます。
この3つの中で、私がわかりやすいと感じる「支出」による定義に従って、GDPを解説してみましょう。
極めて単純化すれば、支出により定義されたGDPとは「企業、個人(家計)、政府などが使うお金の総額」です。企業が使うお金を考えた場合、各種メディアにおいて「企業の設備投資が増加、あるいは減少した」という報道を目にした機会が多いのではないでしょうか。
付加価値とは何?
しかし、企業が使うお金は、製品の原材料の購入費など設備投資以外にもあるのに、なぜ設備投資が経済成長を語るうえでの重要な要素とされるのでしょうか。
ここでポイントとなる概念が、さきほど出てきた「付加価値」です。
企業は原材料を購入するためなども、お金を使います。しかし、この使ったお金はGDPにカウントされません。なぜなら、企業が生産して、製品を販売することによって生み出した価値(付加価値)は、製品価格から原材料価格などを引いたものに過ぎないからです。
したがって、単純化すれば、GDPとは「企業、個人、政府などが、ダブルカウントを除いて使うお金の総額」です。ここで、原材料購入費などのダブリの部分は「中間消費」と呼ばれます。これに対して、個人消費は「最終消費」となり、極めて重要なGDPの構成要素となります。
GDPが市場に与える影響
米国の4~6月期のGDPはすでに発表されており、前期比年率の実質値で4.1%の増加と、1~3月の同2.2%増から大きく改善しています。
グローバル化の進展によって、世界経済はかつてと比較して同調性を強めていると思われます。そのため、約2年ぶりのマイナスとなったわが国の1~3月期のGDPと比較して、4~6月期が持ち直すことは、ほぼ確実と思われます(ブルームバーグ予想は同1.4%増、下図)。
確かに1~3月期には成長について心配な局面があったものの、今後少なくとも2019年前半までは、大きな攪乱要因がなければ、成長は底堅く推移すると私は見ています。今回のGDP発表も、この見方を裏付けるものになると考えています。
貿易戦争、猛暑の影響、災害の影響などリスク要因はあるものの、メインシナリオとしてはあくまでも景気の底堅い回復を予想します。そもそも私の経験では、リスク要因がないと皆が思うような局面はすでにバブルです。
極めて短い時間軸で考えた場合、わが国の4~6月期のGDP(速報値)が1%を割り込む場合、あるいは1.6%を上回る場合は、市場に影響を与えそうです。特に、貿易戦争の影響が現れたと評価できるデータが発表された場合には、留意が必要です。
(文:アセットマネジメントOne チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行)