はじめに
今年も残すところ4カ月余りとなりました。夏が終われば来年のスケジュールも気になってくることかと思われます。
来年は5月に新元号への移行という一大イベントがありますので、それに前後して平成の株式相場を振り返るレポートが出てくる可能性もあります。いささか気が早いですが、平成生まれの企業について考えてみます。
新興株式市場のウエイトが大きい平成生まれの企業
平成生まれの企業とは、法人の設立年月日が平成の企業を指します。本稿では、株式移転などにより設立年月日が平成となっている企業の場合、その母体企業が昭和あるいはそれ以前であると考えられる企業については、設立時期不明として除外しています。
設立時期不明の企業を除くと、上場企業は、(1)平成生まれの企業約800社、(2)戦後の昭和生まれの企業約1,900社、(3)戦前生まれの企業約800社に大別されます。
これらの3グループを市場別にみると東証1部の割合は(1)が30%弱、(2)が55%、(3)が75%と設立年の古い企業ほど東証1部の割合が高くなっています。
逆に、東証JASDAQや東証マザーズなどの新興株式市場の割合は(1)が65%、(2)が30%、(3)が10%弱になっています。平成生まれの企業は新興株式市場のウエイトが大きいことが特色となっています。
平成生まれの企業の成長率はブレが大きく、企業収益のボラティリティが高い
平成生まれの企業のパフォーマンスを図るため、平成生まれの企業とそれ以外の企業について、成長率の中身を少し詳しく見てみます。
まず、平成生まれの企業と他企業(戦後生まれと戦前生まれの合計)で、過去10年分の営業利益成長率について、黒字転換、年率10%以上成長、年率0~10%成長、マイナス成長、赤字転換・赤字継続に分けて社数ベースの構成比を見てみます。
平成生まれ以外の企業では、年率10%未満のプラス成長が全体の40%を占め、ついでマイナス成長が33%、年率10%以上のプラス成長は17%、黒字転換、赤字転落・継続がそれぞれ5%となっています。
一方、平成生まれの企業では、年率10%未満のプラス成長と年率10%以上のプラス成長がそれぞれ26%あり、マイナス成長は18%、黒字転換、赤字転落・継続がそれぞれ15%ありました。
平成生まれの企業は他企業に比べボリュームゾーン(たとえば年率10%未満のプラス成長)が少なく、黒字転換(あるいは年率10%以上成長)か赤字かといった企業収益のボラティリティが高いと言える結果となりました。
高成長の平成企業の株価パフォーマンスは良好
続いて、株価を見てみましょう。平成生まれの企業は新興株式市場のウエイトが大きいため、近年の中小型株式優位の相場に沿って良好な株価パフォーマンスが期待されるところです。
下図は平成生まれの企業の株価指数とTOPIXを比較したものです。「平成生まれの企業の株価指数(A)」は平成生まれの企業全体の株価指数を表しています。その動きはTOPIXと似ていますがTOPIXよりやや低いパフォーマンスとなっています。平成生まれの企業全体では、パフォーマンスは必ずしも芳しくないようです。
一方、下図「平成生まれの企業の株価指数(B)」は、平成生まれの企業のうち、過去10年で年率10%以上営業利益が成長した企業で株価指数を作成したものです。こちらはTOPIXと比べ大幅によいパフォーマンスを見せています。
平成生まれの企業は年率10%以上成長した企業の構成比が高いことから(平成生まれの企業は26%、他企業は16.5%)、もし、成長企業を見分けることが可能であれば平成企業への投資は非常に高い株価上昇を享受することができるチャンスは十分にあるといえるでしょう。
高成長が期待される平成生まれのユニバース銘柄
下表はいちよし経済研究所が業績を常時フォローしているユニバース銘柄(一定の運用目的に沿った投資を行う際に対象となる銘柄)のうち、平成生まれで高成長が期待される銘柄をピックアップしたものです。
設立年月日が平成で直近決算の実績ROEが10%以上の銘柄のうち今後3期間の予想営業利益÷直近の営業利益実績が高い順に40社をランキングしています。
この中から、新元号下で良いパフォーマンスを見せる会社が現れるかもしれません。
(文:いちよし経済研究所 久保毅)