はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
50歳を前にして、パートナーもいないため将来に不安を感じております。地方出身で、東京に一人暮らし。将来実家に帰る予定はありません。以下の2点について悩んでいます。
(1)住居問題
通勤時間を短縮したいので、もう少し都心に近いところに住み替えたいと思っています。そうなると家賃は上がりますが、時間を買うという意味では、払える範囲であれば上がっても仕方ないと思っています。生涯家賃を考えると、中古マンションを買った方がいいのでしょうか。
(2)資産運用
現在、預貯金、投資信託などで計3,200万円ほどの資産があります。そのうち、1,600万円は積立定期や普通預金などで、積極的に運用はしていません。投資信託は銀行に勧められたものなどで、トータルではプラスなものの、かなりマイナスになっている商品もあります。これではいけないと、本などで運用方法など勉強しておりますが、なかなか難しく……。資産の配分は、どのようにしたらよいのでしょうか。
(女性、48歳、バツイチ、子どもなし)
内藤: 年齢とシングルということを考えれば、充分な資産を保有されていると思います。
問題は毎月の収入と支出のバランスです。住居を決める際には、現在の毎月の収入と支出、そして将来の変化を予想しながら決めていくことになります。
家を買うか借りるか
家を買うか借りるかという選択肢ですが、家を購入してしまうと、その分の資産運用はできなくなります。逆に、家を借りれば家賃は必要になりますが、マイホームの購入資金を運用に回すことができます。
たとえば、3,000万円のマイホームを購入して、その物件をもし賃貸に出したときに利回りが3%だとしたら(年間家賃90万円)、3,000万円を都心の中古マンション購入費に充てて、4%の利回りで賃貸に出し(年間家賃120万円)、その賃貸収入で、家賃10万円の物件を借りた方が合理的ということになります(手数料、税金などは考慮せず)。
つまり、購入した不動産物件を賃貸に回した場合、どのくらいの利回りになるかが判断基準の1つになります。
マイホームの方が利回りが低くなる傾向があり、またライフスタイルが変わって売却する際などの手間やコストもありますから、賃貸物件を10年単位で保有する方が有利になることが多いようです。個別の物件によって条件は変わりますが、「マイホームの利回り」という視点は忘れないようにしてください。
保有している資産を6つに分類
資産運用に関しては、まず現状把握から始めてください。ポイントは2つです。1つは、株式や不動産といったリスク資産と、債券のような低リスク資産の比率。もう1つは、円貨と外貨の比率になります。
私がいつもおすすめしているのは、保有している資産をまず6つの資産の種類(アセットクラス)に分類して、資産の比率を計算することです。
1.日本株式
2.日本債券
3.外国株式
4.外国債券
5.流動性資産
6.その他の資産(REIT、コモディティなど)
投資信託のような金融商品を保有している場合は、その中に組み入れられている投資対象が何なのかを調べて、分類していきます。月次で作成される運用報告書には資産の組み入れ状況が掲載されているので、それを見て計算しましょう。
資産はすべて時価で計算してください。現時点で売却して現金化した時の金額が、今の資産配分になるからです。
このような比率を計算してみて、資産の3と4を合わせた「外貨資産」が全体の40%程度、1と3を合わせた「株式資産」も全体の40%程度になるのが標準的な資産配分だと考えています。
実物資産の保有も検討を
資産運用に回す金額は、10年単位で運用するのであれば、生活費の3ヵ月分を手元に置いて、それ以外はすべて運用に回してしまっても問題ありません。短期で運用するのであればともかく、長期で資産を分散すれば運用によるリスクは軽減されていくからです。
また、金融資産だけではなく、不動産のような実物資産を使った資産運用も検討する価値があります。シニア層になると、キャピタルゲイン(値上り益)よりも、不動産の家賃収入のようなインカムゲインが重要になってくるからです。将来的には実物資産と金融資産のバランスを考えたポートフォリオを構築していくのが理想です。
ただし、実物資産への投資は、金融資産とは異なり、金額も大きく、しっかり知識を得てから始めるようにしましょう。まずはセミナーなどに参加して、情報収集してみることで、成功の可能性を高められると思います。
いずれにしても現状把握からアクションを起こし、悔いのないお金との付き合い方を実現してください。