はじめに
支持率と株価が連動するメカニズム
こうした内閣支持率と株価の連動は、単なる偶然でしょうか。実は、ちゃんとした理由があるのです。ここでは3つの大きな理由を紹介します。
1つ目は「支持率が高い→政策実行力が高い」ことが株価を支えるからです。支持率が高いということは世論が味方であることを意味し、首相は強いリーダーシップを発揮しやすく、国政の舵取りもスムーズになります。構造改革や経済政策などの決定を下しやすいことを株式市場は好感します。
2つ目は、支持率が低下すると、逆に現政権が支持率を高めるための方策として経済対策などを打ち出す機運が高まることです。「支持率が下がる→経済対策を打ち出す→景気や株価が上がる→支持率も回復」という一連の流れになります。
3つ目は、外国人投資家の動きです。彼らは政局が不透明になると、それを嫌気して日本株を売ります。逆に政局が安定していると、それだけリスクが小さくなるので、日本株を買いやすいというわけです。
長期的には支持率と株価は連動しない
一方、専門家の間ではグラフを見るうえで注意が必要なことも知られています。実はこの注意点、とても重要です。
図2では、図1よりも長期のグラフを取り上げました。第2次安倍内閣発足時からの支持率と日経平均株価です。実は長期で見ると、2本のグラフは連動していないのです。
支持率は、政権発足時こそ国民の期待を背負っているために高まりますが、その後は下がるのが通常です。一方、2013年から株価は上昇しており、支持率と逆の動きになっています。
また、図2の4回の矢印にあるように、政治的な議論が混迷すると、支持率は超短期に急落し、その後にリバウンドします。しかし、株価はこの超短期の変動には敏感に反応しません。
短期的には総裁選後の政策に要注目
もっと基本的な話をすれば、支持率は0%から100%までの間で動くものですが、株価にはこの制限がないため、そもそもの値が動く範囲が異なります。ですから、内閣支持率と株価は長期で見る場合には神経質に考えるものでもない、ということを頭に入れておく必要があります。
巷では、安倍首相の総裁再選の可能性が高いといわれています。来年10月に予定されている消費増税まで1年1ヵ月を切り、内需を背景とした国内景気拡大への政策が期待されています。さらに長期で見れば、東京五輪の先も成長が長く続くような、デフレ脱却への道筋が期待されます。
過度に敏感にとらえるものでもないとはいえ、1年程度の期間で見ると、株価と連動性がとても強いのが内閣支持率です。総裁選後の経済政策や、期待を反映した支持率の行方が当面の日本株市場を左右するかもしれません。