はじめに

国内でパソコン(PC)の出荷台数が増加に転じています。国内PC市場は既に成熟化し、近年出荷台数も減少が続いていましたが、2020年にむけて需要が回復すると予想されてます。その理由とは何なのでしょうか?また、その需要をとらえ成長を加速することができると予想されるPC関連企業とは?詳しく見てみましょう。


PCの需要が回復している理由

2017年の国内PC出荷台数は、直近のピークだった2013年度との比べ44%減少しています。特需の反動に加え、スマートフォン保有台数の増加などもあり個人向け需要が大きく減少したためです。
しかし、一般社団法人電子情報技術産業協会が発表しているパーソナルコンピュータ国内出荷実績によれば、2018年4~7月212.8万台(前年同期比7.8%増)となりましたが、単月ベースでも5か月連続でプラスとなり、その後も緩やかに回復に向かうと予想されます。これはWindows XPサポート終了時で買い替え需要が盛り上がった2014年春以来のことです(下図)。

今回の需要回復の理由は、主に3つです。(1)直近ピークの出荷台数となった2013年度から5年が経過し、買い替え需要が顕在化しつつあると見られること、(2)企業業績全般が回復しているなかで「働き方改革」など業務効率性を追求する流れにより法人向け需要が拡大の動きがあること、(3)Windows7のサポート終了を2020年1月に控え、前倒しの更新需要が顕在化していること、などが考えられます。当研究所では2018年度は前年比7.9%増、2019年度は同9.6%増を予想しています。

PCというと価格下落が続いていると思われがちですが、平均の出荷単価は2012年度をボトムに緩やかに上昇しています。(1)軽量化・薄型化・2in1タイプ(ノートPCとしてもタブレット端末としても使えるPC)の増加や、HDD搭載からSSD搭載へのシフトなど付加価値化が進んでいること、さらに(2)国内PCメーカーの一部撤退や縮小などにより過当競争が沈静化していること、などが背景と考えられます。これらの傾向から、今後も出荷金額ベースでも回復が続くと予想します。

買い替え需要をとらえる2社

そのような国内PC市場のなかで、ほぼ一貫してPC関連事業の売上高を伸ばしているのが、ダイワボウホールディングスとMCJです。両社のPC関連事業の2018年3月期売上高は2010年3月期と比較して5割程度の増加となりました。この間、金額ベースのPC市場は3割程度減少しましたので、両社の躍進は目覚ましいと言えます。

ダイワボウホールディングスは、中核子会社のダイワボウ情報システムでIT関連製品の卸売を行っています。同社は国内外の約1,200 社に及ぶメーカー・サプライヤーから仕入れた約210 万アイテムのIT 関連商品を国内約19,000社の販売パートナーを通じて販売しており、法人向けPCでは25%程度の国内シェアとトップです。IT関連製品の草分けとして強固な営業基盤を有し、独自マルチベンダーとしてワンストップサービスを提供できる点が強みとなり、市場シェアを拡大させています。
 
MCJはPCメーカーのマウスコンピューターを中核子会社とする持株会社です。同社は顧客から製品の発注を受けてから国内自社工場で組み立て製造を行うBTO(受注生産)方式を強みとし、在庫ロスや売れ残りリスクが少なく、高い商品鮮度を保ちながらリーズナブルな価格による製品提供が可能です。

またゲーマー向け、クリエーター向けなど多様化するニーズに応えながら顧客の要望に柔軟に対応できるため、今後もシェア拡大が続くと考えられます。

PC市場の変化は外付けHDD、増設メモリ、無線LANルーター、入力デバイス(キーボード、マウス等)といったPC周辺機器市場にも影響を与えています。そのなかで、当研究所ではノンバンドルモニタ市場(主にデスクトップPC向け液晶モニタ単体市場)に注目しています。

PC市場の回復に加えて、平均画面サイズの上昇やモニタ複数台使用の増加などが貢献すると考えられるためです。同分野でのトップ企業はアイ・オー・データ機器です。国内シェアは3割程度を握っていますが、現在では幅広い製品ラインアップやスケールメリット(液晶パネルのバーゲニングパワー)が強みになっており、今後もトップメーカーとしての地位を維持拡大できると考えます。

(文:いちよし経済研究所 企業調査部 張谷幸一)

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