はじめに
『会社四季報』(東洋経済新報社発行)は、約3600社の上場企業の業績や最新の財務情報をコンパクトに収録。「投資家のバイブル」と言われています。投資家でなくても、経済・金融を理解するためには、読みこなせるようになりたい本の一つでしょう。
しかし、ページ数は2000ページを超え、初心者がいきなり読みこむのは至難の技。そこで、株式投資スクール「ファイナンシャルアカデミー」の“四季報マニア”、森口亮さんに初心者向けの四季報の読み方のコツを教えていただきました。
売上と営業利益10%増、利益率10%以上の会社だけチェック
『会社四季報』を読むのが趣味で、1冊5時間で読み終えるという「ファイナンシャルアカデミー」認定講師で個人投資家の森口亮さん。
「四季報の内容によって株価は変動することがあるため、定期購読して発売日前日には入手。発売日の朝になったら、すぐに売買に動けるよう一晩で読みこなして投資対象を絞り込んでおく」という、生粋の“四季報使い”であり、“四季報マニア”です。
一体、どうしたら、あれだけのページ数と情報量を5時間で読みこなせるようになるのか?! せいぜい、初心者は面倒そうな数字は置いておき、文章になっている最近の動向や業績について書かれた解説パートを読むだけで手一杯なのでは……と思います。
しかし、森口さんは逆に「文章の部分は読まなくていいんです」とアドバイス。解説パートは読むとしても、投資の対象企業を絞り込んだあと。業績数字、PER(株価収益率)、株価チャートの形だけをまずチェックし、中でも、初心者は直近の売上と営業利益が前年比10%増、今期予想や来期予想の営業利益率が10%以上のものだけを探してひたすら付箋をつけていくだけでいいと言います。
まずは10%に慣れること
特に、営業利益率は一般的に2〜3%が日本企業の平均値なので、10%あればかなり優秀な企業ということになります。商品・サービス価格が安定的に維持できていないと高い利益率は保てません。ゆえに、利益率が10%あるかどうかは継続的に伸びていく可能性のある企業かどうかを予測するヒントになります。
「大切なのは、まず10%という数字そのものに慣れること。10%なら計算も簡単です。例えば、1000という数字があったとして、その10%増であれば『1100だな』とか、500を見たら550だとすぐ分かる。1万259だとしても、細かい数字は気にせず、1万1000と考えて、それ以外を省き、10%になっているものを見つければいい」
営業利益率は、売上からコストを引いた額である営業利益の数字と売上を比べれば分かります。「計算をせずに、桁数を見るだけでも10%以上のものを見つけられます。売上と営業利益の額の桁数が同じなら10%以上は確実。一方で、売上は5桁あるけど、営業利益は3桁しかないなど2桁以上、営業利益の額が小さければ、確実に10%以下になる」
付箋で5〜6社に絞り込み
こうしたコツは30〜40個あり、数字を追っているうちに様々なパターンが見えてくるので、だんだん見つけるスピードも上がっていきます。そのため、初心者は業績の数字だけに集中すればいいとのこと。要は、自分の基準に合う数字をひたすら拾って読んでいくのが四季報の基本的な読みこなしのコツだということです。
「最初は50から60社くらいに絞れる。そこから、さらに5〜6社くらいに絞って、その段階で初めて文章の部分を読む」と森口さん。さらに、森口さんの場合は、ひとまず、数字の選別の段階でいいと思うものに、付箋を一色貼り付けていきます。
また、前号と比べて、投資家が見たら驚きそうな変化、サプライズの要素がある銘柄や明朝すぐに投資できそうなものには、もう一色の付箋を貼り付け、2色貼ってあるものに実際に投資するという四季報の読み方・使い方をしています。四季報を読んだことで投資家が驚き、株価が動くなら、速く読んで速く動くほど有利になるからです。