はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
NISA枠を使って投資信託を始めようと思っています。インデックスファンドを中心に、月2万ほど積み立てていきたいと思っています。ですが、実際にやってみようとしたら、銘柄が星の数ほどあって迷ってしまいました。買うものはひとつで良いのでしょうか。債券インデックス、REITインデックスなど、いろいろなものを買った方が良いのでしょうか。また、インデックスファンドを使った具体的な積み立て方法を教えてください。
(男性 30代前半、既婚)
花輪: 先日、国内29の銀行で投資信託を買った個人客の半分近くが、運用損失を出していることが金融庁の調べで分かり、報道されました。
長期資産形成に向く商品はわずか1%
日本の投資信託は数だけが多く、そのことが選びにくくさせています。
日本にある公募株式投資信託(2017年3月末時点で約5,400本)のうち、長期資産形成に向く(つみたてNISAの対象になる)ファンドは1%程度しかないというレポートを金融庁が発表しているほどです(金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」)。
日本で投資信託を選ぶ場合、つみたてNISAで買える金融商品を選択肢にするとよいかもしれません。金融庁が定めた一定の基準を満たした投資信託・ETFしかラインナップされていないからです。
家族構成、資産などから自分のリスク許容度を知る
一般社団法人全国銀行協会のホームページに「あなたのリスク許容度診断テスト」というページがあり、簡単な質問に答えることによってリスク許容度のパーセンテージ、おすすめポートフォリオの一例、コメント等を出してくれるので試してみてもよいでしょう。
リスクとは、リターンの振れ幅のことですが、リターンがマイナスに振れてしまった場合、どれくらいまでならマイナスになっても受け入れることができるか、という度合いのことを「リスク許容度」といいます。
期待するリターンの最大値・最小値を並べると、大きなリスクをとれば、期待リターンは高まりますが、その一方で損をする可能性も大きくなります。リスク許容度とは、「どれくらい投資元本がマイナスとなっても生活に影響がないか」「どれくらいまでなら、投資元本がマイナスとなっても精神的に耐えられるか」というものです。主に年齢、家族構成、資産、収入、性格・経験の5つの観点から測定します。
そして、自分自身でも、どの程度まで資産が目減りしても生活に影響を与えることなく投資を継続することができるか、家族構成、家計、資産、ライフステージ、性格などから照らし合わせて考えることが大切です。
リスク許容度に合わせたポートフォリオを参考にし、それに沿った割合で投資信託を選んでいくと良いでしょう。その際に、相談者のようにインデックスファンド(できれば、つみたてNISA対象商品)を選ぶのも一つでしょう。
インデックスファンドをすすめる2つの理由
インデックスファンドは、パッシブファンドとも呼ばれ、TOPIXなどの指数(インデックス)と同じ値動きを目指す投資信託のことです。これに対し、ファンドマネージャーが積極的に銘柄選択をして、TOPIXなどの指数以上の運用成績を目指すアクティブファンドと呼ばれる投資信託もあります。
初心者にインデックスファンドをおすすめするのは、「分かりやすい」「低コスト」という2つの理由があるからです。
国内で運用される投資信託は数千本もあり、その中からどのファンドマネージャーが運用する商品がいいのか選ぶことは至難の業です。それに対して、TOPIXなどの指数は新聞の一面やネットニュースですぐに知ることができ、初心者でも値動きなどが大変分かりやすいものです。
投資信託にかかる3つのコスト
また、インデックスファンドは低コストの商品が多く揃っています。投資信託には、一般的に以下の3つのコストがかかります。
【投資信託にかかる3つのコスト】
・購入時(申込手数料)
・保有中(信託報酬)
・換金時(信託財産留保額)
中には購入時、換金時の手数料が無料のファンドもあります。購入時と換金時の手数料は、株式を売買する際にもかかりますが、投資信託の場合は、それに加えて保有中も日々コスト(信託報酬)がかかるのです。
信託報酬はたとえ運用するお金が減った場合でも、投資信託で運用する以上は必ずかかります。そのため、信託報酬という投資信託にかかるコストをしっかり確認してから商品を選ぶことが大切です。