はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

65歳までは働くつもりですが、4年後に定年を迎えるにあたり、今後の資産運用についてアドバイスをお願いします。

【現在の資産】
・預金:1,600万円
・株:320万円
・投資信託:1,270万円
・終身保険:1,630万円
・不動産評価額:2億3,000万円

【負債(ローン)】
・投資区分マンション7物件:8,430万円
・1棟物件:1億8,000万円(最近購入)
※投資用区分マンションは年140万円程度の赤字、1棟物件は年150万円程度の黒字となっています。

(男性 50代後半 既婚・子ども2人)


内藤: 不動産の比率が高いポートフォリオになっていますから、最初にチェックしなければならないのは、保有している不動産物件の運用状況です。

物件毎に黒字になっていることが大切

いただいた数字だけでは判断できませんが、投資用マンションが赤字になっているということは、空室が続いているなどの理由でローンや税金の支払いが家賃収入を上回っている状態かもしれません。

まず、こちらの7物件について、今後の収支見通し、空室のリスク、リノベーションなどによる収益改善の可能性などを、専門家に相談することをおすすめします。

将来の見通しがつかないのであれば、損失が出るとしても売却を含めて検討すべきでしょう。不動産の場合は、それぞれの物件毎に単体でキャッシュフローがプラスになっていることが重要です。

借入比率を下げるのも手

また最近購入された一棟物件は、現状は黒字ということですが、ローンの支払い後の金額としても、投資金額に比べ黒字金額が小さいように思えます。

こちらも、どのようにしたら収益性の改善ができるのかをゼロベースで検討してみる必要があるでしょう。借入比率を下げることで、キャッシュフローを改善するのも選択肢の1つです。

国内の不動産投資に関しては、東京23区などの一部のエリアを除いて、人口減少と賃貸用住宅の過剰建設で空室率が高まっていくことが予想されます。保有している物件の周辺エリアの人口動態を確認すれば、今後の賃貸需要について方向性が見えてきます。

現状の賃貸状況だけではなく、5年後、10年後の物件の価値を考えながら見通しをつけていくことが重要です。

リスクによって資産を6つに分類する

次に、不動産以外の資産に関しては、預金、投資信託、保険といった商品によって分類するのではなく、リスクによって資産分類を行ってみてください。

私は資産を6つに分類することを提唱しています。日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、流動性資産、その他の6つです。

同じ投資信託でも、日本株に投資するものと外国債券に投資するものでは異なるリスクを持っています。違う商品であっても同じリスクのものはまとめて管理する。このような方法で資産全体のリスクが、どのようになっているかチェックしてみてください。

債券や株式の保有比率を下げて、金融資産のリスクを下げていくことも検討できます。その資金を借り入れの返済に充てれば、不動産からのインカム収入が増えることになります。

いずれにしても、不動産の比率が圧倒的に高く、将来の資産に対する影響が大きいので、この部分を早急に見直して、必要な対策を講じることが先決です。

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