はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は高山一恵氏がお答えします。
結婚して2年目、30代女性です。そろそろ子どもが欲しいとは思うものの、結婚式や新婚旅行でお金を使ってしまい、貯金がまったくありません。出産、育児金はどれくらい必要でしょうか。共働きで世帯年収は750万円になります。
〈相談者プロフィール〉
・女性、30代前半、既婚、子どもなし
・手取り世帯年収:750万円
高山: ご質問ありがとうございます! そろそろお子さんを授かりたいけど、お金の面が心配で1歩を踏み出せないようですね。
ご相談者さんのように、子どもは欲しいけど、経済力が心配で子ども産むことに躊躇してしまうという方は、若い世代を中心に少なくないようです。
確かに、子育てにはお金がかかりますが、実は届け出をすればもらえるお金もたくさんあります。今回は、出産、育児にかかわるお金についてご紹介しつつ、もらえるお金にもついてもお伝えします。
出産費用は「出産育児一時金」から賄える
子どもが欲しいと思いつつも、「子どもを育てるには相当お金がかかりそう…」と、なかなか前向きになれない人も多いようですね。出産、育児は、なにかとお金がかかりますが、実はもらえるお金もあるので、あまりナーバスに考える必要はありません。
たとえば、妊娠したらもっとも気になるのが出産費用だと思いますが、厚生労働省保険局「出産育児一時金の見直しについて」(平成26年)によると、出産費用の平均(平成24年度)は48万6,376円となっています。もちろん、地域によっても差があると思いますが、概ね出産費用は50万円程度かかると思っておけば良いでしょう。
50万円というと、やっぱり出産ってお金がかかると思ってしまいそうですが、「出産育児一時金」を利用すれば、これらのすべて、または大部分をまかなうことができます。
出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険に加入していて、妊娠22週以上で出産する人が受け取れるお金です。夫の扶養に入っている人は、夫の加入する健康保険から支給されます。
金額は基本的に「子ども1人につき42万円(利用している医療機関が産科医療補償制度を導入していない場合は40万4,000円)※双子の場合84万円」です。
ただし、イマドキは分娩スタイルにこだわる人も多く、一般的な分娩方法は自然分娩ですが、水中分娩や無痛分娩などを選択する人も。分娩スタイルや個人病院なのか、総合病院なのかによっても費用は大きく異なりますが、出産する施設や分娩方法にこだわりを持たなければ、出産育児一時金で分娩費用のほとんどをまかなうことができます。
さらに嬉しいことに、出産育児一時金を医療機関に直接支払ってもらう「直接支払制度」や「受取代理制度」があります。請求を医療機関が行うか自分で行うかの違いだけで、もらえる金額は同じです。どちらが利用できるかは医療機関によって異なります。
この制度を利用すれば、自分が支払うお金は出産費用の差額分だけでいいので、持ち出しが少なくて済みます。
妊婦検診には合計いくらかかる?
ちなみに妊娠すると、病院で妊娠の経過が順調かどうかを確認するために「妊婦健診」を受けることになり、一般的には14回程度受診することになります。
通常、1回の健診費用は5,000円〜10,000円程度かかりますが、妊婦健診にかかる費用負担を減らすため、各自治体で妊婦健診の費用を一部助成するための「妊婦健診の補助券」を妊婦さんに配布しています。
母子手帳を受け取る際にもらえる受診券(補助券)を受診時に渡すことで、無料で健診が受けられるようになります。ただし、14回を超える健診や、基本的な内容を超える検査については実費負担となることが多いようです。
助成金の制度については、各自治体によって助成の内容が違いますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。自治体によってはさらに手厚い助成を受けられるところもあります。
育休中は「育児休業給付金」が支給される
イマドキの家庭は、出産後も妻が働くケースが多く、共働き家庭が一般的。相談者さんも出産後、育児休業を取得して、その後、仕事に復帰するという場合、雇用保険に加入していて、一定の条件をクリアしていれば、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業給付金は、基本的に働いている母親だけでなく、働いている父親(雇用保険に加入していて一定の条件をクリアしている)も給付金をもらうことができます。
支給金額・期間は、育児休業開始後、180日までは休業開始時賃金の67%、181日以降は50%、原則として子どもが1歳に達するまで支給されます。なお、保育園に入れないなどの事情がある場合には、最長で子どもが2歳に達するまで支給されます。
たとえば、標準報酬月額が30万円の場合、1年間育休を取得すると、ざっくり計算すると、約182万1,000円が支給されます。出産手当金と合わせると、200万円以上は支給されることになります。
ご自身の産休、育休を取得した場合の給付金の金額を知りたい場合には、こちらのサイトからシミュレーションしてみましょう。私の友人の社会保険労務士の方が運営しているサイトですが、すぐに金額がわかるので便利です。
事前に産休中、育休中に支給される金額がわかれば、いくら貯蓄があればよいのか、また、家計の中でどこを削減すればよいのか見通しを立てることができるので安心ですね。
子どもが小さいうちが貯め時!
今まで見てきましたように、産休、育休中はもらえるお金もあるので、必要以上の心配はいりません。
また、基本的に子どもが小さいうちは、お稽古事などに費用はかかりますが、まだ本格的に教育費はかかりません。本格的に子どもにお金がかかるのは、小学校高学年頃からです。
ただし、子どもにお金がかかるといっても、子どもの進学コースによってもかかる教育費は大きく違います。一般的に幼稚園から大学までオール公立の場合には1,000万円、オール私立の場合には2,000万円かかるといわれています。
子どもが欲しいと思ったときには、出産・育児の費用を考えることも大切ですが、それ以上にそこから先、長きにわたってかかる教育費についても考えておくことが大切です。
2019年10月からは、幼児教育無償化がスタートする予定なので、子どもが生まれた暁には、子どもにお金がかからない幼少の頃から計画的にお金を貯めていきましょう。突飛な進学プランでもないかぎり、共働きで世帯年収750万円あれば、十分に子どもを養育していくことができます。