はじめに
各金融機関に1人は存在するという「四季報マニア」に『会社四季報』の読み方を聞いていく短期連載。第1回は、風呂場にまで四季報を持ち込むという“古き良き”タイプのマニアの読み方をご紹介しました。
第2回は、24歳の若さで株取引歴6年という、いわば“新世代”の四季報マニア。新興フィンテック企業Finatext(フィナテキスト)でコミュニティ型株取引プラットフォーム「ストリーム」の設計などに携わる、古田拓也さん(1級FP技能士)です。
「四季報の読み方は3~4パターン持っています」と、笑顔で語る古田さん。今回はその中でも、株初心者にオススメだという読み方を披露してもらいます。
PER100倍以上で網をかける
「3,600以上の銘柄が載っているので、ちゃんと読もうとすると大変です。初心者の場合、まずは四季報を見開きにして、個別銘柄欄の上、チャートとPER(株価収益率)などの株価指標が載っている部分だけを読んでいく方法が最適です」(古田さん)
会社四季報といえば、担当記者が取材から導き出した定性的な情報と独自の業績予想が“売り”とされています。しかし、古田さんが着目するのは、そうした部分ではなく、PERだといいます。
古田さんが注目するのは、個別銘柄の上に表示されているPERの欄
どうやって取捨選択していくのかといえば、PER100倍以上の銘柄だけを抽出していきます。日本株の平均PERは13倍前後なので、一般論からいえばPER100倍以上というのは超割高な水準になります。
「PER100倍だと、投下資本の回収に100年かかることを意味しています。しかし、なぜ割高のまま、個人投資家よりも資金を持っている大口の投資家が売り浴びせしないのでしょうか。成長可能性を大いに含んでいるからです」と、古田さんは指摘します。
現時点では割高な株価水準も、収益性が上がれば正当化することは可能。極端な例を挙げれば、PERが100倍だったとしても、1年で収益性が100倍になれば、株価の正当性は1年で高まるというわけです。
ここで注意すべきなのは、赤字が続いていた企業が一過性の利益でわずかに黒字になった結果、PERが一時的にハネ上がっている銘柄もあることです。まずは機械的にPER100倍以上を抽出するものの、その後の精査によってこうした銘柄を排除していく必要がある、と古田さんは説きます。
この作業は、慣れれば1時間程度で完了するそうです。これによって、銘柄の数を3,600超から100台にまで絞り込めるといいます。
オーナーの保有比率が5割超を狙え
続いては、PER基準で抽出した銘柄の「株主欄」をチェックしていきます。この時に注目するのが「筆頭株主」です。
高PER銘柄はオーナーが大量に自社株を保有しているケースが多いといいます。彼らはそう簡単に株を手放さないので、株価の変動は抑制されやすい傾向があります。また、意思決定のスピードと収益力向上のモチベーションが高いため、成長余地も高いことが多いそうです。
もちろん、オーナーが強烈なリーダーシップを持っていることで短期的なモラルハザードが起こるリスクもあります。ただし、それに伴う最大の損失もオーナーが被ることになるので、実際には問題化しにくいと、古田さんは見ています。
オーナーの保有比率は5割以上が理想。この時に注意が必要なのは、オーナー一族の管理会社が筆頭株主というケースです。これを見抜くにはセンスと経験が必要だといいます。
この作業に要する時間は3時間程度。これで大体、30銘柄くらいに絞れるそうです。