はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

子どもたちの受験費用と学費を捻出するために凍結していた投資を再開したいと思っています。65歳までは働くつもりです。退職までの15年間で、年250万円程度の投資を行い、年金・退職金とは別に6,000~8,000万円程度の老後資金をつくりたいと思っています。そこで、長期投資前提で年250万円の投資方法、投資先をご指南ください。また、投資している2,700万円分を東京オリンピックの前に、一度換金して再投資したいと思っています。時期は自ら判断しますが、こちらも投資方法、投資先をご指南ください。日本株中心の資産ということが不安なのです。


〈相談者プロフィール〉
・男性、50歳、既婚、子ども3人(大学1年、高校1年、中学1年)
・職業:会社員(管理職)
・年収:1,000万円程度
・年間の支出目安:754万円(学費250万円含む)


<総資産2,900万円>
・現金:200万円
・個別日本株:700万円
・投資信託(すべて国内独立系運用会社数社):2,000万円


内藤: 年間250万円の追加投資で、65歳まで働いて、資産を形成したいということですが、単純計算で250万円を15年間で3,750万円。それに現在の資産2,900万円と合わせると、それだけで6,600万円以上の資産になります。

年齢も考えれば、これから大きなリスクを取ってさらに大きく資産を増やそうとするよりも、元本が目減りするリスクの低い資産を組み合わせて、資産構築をするのが良いと考えます。そのためにはまず、現状の資産状況の把握からはじめましょう。

2つの視点から資産を分析して比率を計算

投資信託の残高が2,000万円ということですが、これだけではどのようなリスクを取っているかわかりません。具体的にどのような資産に振り向けられているか、組み入れ状況を分析して、アセットアロケーションの状況を認識しなければなりません。

その際の分析の視点は2つあります。1つは、株式や不動産といったリスク資産と、債券のような低リスク資産の比率、もう1つは円貨と外貨の比率になります。下記のように6つの資産に分類(アセットクラス)して、資産の比率を計算していきます。

1. 日本株式(個別日本株の700万円もここに入れて計算)
2. 日本債券
3. 外国株式
4. 外国債券
5. 流動性資産
6. その他の資産(REIT、コモディティなど)

ご相談者の場合、個別の日本株式が700万円ありますから、これを日本株式に分類し、比率の計算に加えます。

また、日本株のリスクについて不安があるということですが、個別銘柄を保有してTOPIXのようなインデックスを上回るリターンを実現するのは簡単ではありません。

運用能力に自信があり、過去の運用成績をインデックスと比較して上回っているのであれば、そのまま続けるという選択肢もあるかもしれませんが、金融資産に関してはインデックス運用を基本にすべきで、より時間を割いて検討すべきなのは、前述のアセットアロケーションだと思います。

資産があるならインカムゲインも視野に

さらに、ある程度の資産を保有しているシニア層の方が検討すべきなのは、金融資産によるキャピタルゲイン(値上り益)よりも定期的な家賃や金利収入から得られるインカムゲインを狙った投資です。国内だけではなく、海外の不動産も含め、グローバルな分散投資ができるようになれば、実物資産と金融資産のバランスを考えたポートフォリオを構築できます。

実物資産と金融資産、円貨と外貨のバランスが、自分の運用方針に一致し、しっかり運用状況がモニタリングされていれば、長期で資産構築を安心して行うことができます。今までの話をまとめると、以下のようになります。

1. 日本株の個別銘柄はインデックス運用に切り替える
2. 投資信託を投資先の資産の種類によって分類し比率を計算
3. キャピタルゲインよりインカムゲインを意識した運用にシフトする
4. そのために金融資産だけてはなく実物資産の組入れも検討する

実物資産への投資は金融資産とは異なり、個別性が強く、情報収集による格差がつきやすいと言えます。セミナーや現地の視察によって、投資の成功の可能性を高めることができる資産です。

最終的は資産配分は、自分のリスク許容度によって決定するのが資産運用の基本です。過剰なリスクを取らずに、堅実に資産を増やす方法を実践することをおすすめいたします。

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