はじめに

「株主優待」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。株主優待で生活することで有名な桐谷広人さんがテレビ番組に出演したことで、知名度が大きく高まりました。

株主優待というと「あくまでオマケ」というイメージが強いと思います。たしかに株式投資の目的は値上がり益や配当を受け取ることによって自分の資産を増やすことですから、たくさんの株主優待をもらったとしてもその銘柄の株価が大きく下落してしまっては元も子もありません。ですが、株主優待は株価の値上がり・値下がりにも大きく影響するとても重要な投資のファクターです。

今回は「株主優待はただの”オマケ”にあらず!」というテーマでご説明していきます。


株価を支えているのは株主優待?

そもそも株主優待とは一言で言うと、「企業から株主へのプレゼント」ということになります。ではなぜ企業は株主に優待をプレゼントするのでしょうか?

企業は「長期的・安定的な株主を増やしたい」と考えています。長期的な目線で企業を応援してくれる株主が多いほうが腰を据えて会社経営に取り組みやすくなるためです。また、株価対策という側面もあるでしょう。株主優待を目当てに株式を買う人が増えれば、それだけ株価に上昇圧力がかかる(下落圧力が和らぐ)ということになります。具体例をご紹介しましょう。

数年前、日本マクドナルドの業績が大きく低迷したことを覚えている方も多いのではないでしょうか?期限切れの鶏肉を使っていたことが判明したり、魅力的な商品を打ち出せなかったりしたことで顧客離れを招き、業績は劇的に悪化してしまいました。2014年12月期、2015年12月期の2期連続で売上が大きく落ち込み、計500億円以上の大赤字を計上しました。(下図)

前回の筆者記事で記したとおり、原則として企業の業績と株価の値動きは一致します。原則どおりならば日本マクドナルドの株価は大きく下落していたはずです。では実際どうだったのか、株価チャートを見てみましょう。(下図)

赤線で囲んだ業績が苦しかった時期の株価を見ても、ほほ横ばいで推移しており株価は大きく下落していません。そしてその後、業績が回復するに連れ株価は大きく上昇しました。筆者は、この業績が大幅に悪化した時期にも株価が大きく下がらなかった要因は「株主優待目当ての買い」だと考えています。

日本マクドナルドは、保有株数に応じて自社店舗で使える無料引換券を株主優待にしており、個人投資家からとても人気があります(2018年10月現在)。業績が悪くても株主優待がもらえるなら株を買いたい……と考える投資家が多く、結果的に株価はあまり下がらなかったのでしょう。(もちろん株主優待を出しているから必ず株価が下がらない、ということでは決してありません。)

まだまだある株主優待のメリット

その他にも、株主優待を出す銘柄を保有していることには多くのメリットがあります。まず初心者の投資家が陥りがちな「株価が少しでも上昇したら売ってしまう」ことを防止できます。株価というのは日々値動きするもので、保有していると不安がつきまといます。上昇したら売ってしまいたいというのは仕方のないことです。そんな時にも株主優待をもらえる銘柄であれば、長い期間保有しておく動機づけになりやすいですよね。

もう1つ意外と(?)大事なのが、家族を喜ばせられるという点です。投資をしたことがない方からすると、株式投資は「危ないもの・怖いもの」です。でも定期的に株主優待が自宅に届き、優待を使っておいしい食事に行けるなら「なんだか株っていいものなのね」と家族に応援してもらいやすくなります。

このように“オマケ”として考えられやすい株主優待ですが、実はたくさんのメリットがあります。これから株式投資に踏み出そうという方の最初の一歩は、ぜひ株主優待銘柄を検討されてはいかがでしょうか。

(文:マネックス証券 マーケット・アナリスト 益嶋裕)

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