はじめに
日本の家計消費は、30代で立ち上がり50代をピークに60代以降は減少するという特徴があります。
子育て期は消費が増える時期ですが、今の子育て世帯は、親が就職氷河期世代であり、かつてより厳しい経済状況にあります。
一方で、共働き世帯が増えることで、盛り上がっている消費もあるようです。今の子育て世帯の消費生活には、どのような特徴があるのでしょうか。
子育て世帯は共働きが約6割
まず、子育て世帯のボリュームを確認しましょう。少子化の進行で、18歳未満の児童のいる世帯は減少傾向にあります。2015年では総世帯に占める割合が23.5%となり、全体の4分の1を下回るようになりました(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。
子育て世帯の世帯構造も変化しています。1996年では専業主婦世帯(父のみ有業の世帯)が半数を占めていましたが、2002年に共働き世帯が上回り、2015年では、共働き世帯が約6割、専業主婦世帯が約3割となり、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍を占めるようになっています(図1)。
なお、末子が0歳児の母親の就業率は2015年に約4割、3歳児では6割を超えて上昇傾向にあります。政府の「女性の活躍促進」政策がさらに進むことで、今後ますます共働き世帯は増えていくでしょう。
子育て世帯の厳しい家計収支
共働きが増えた理由には女性の社会進出に加えて、労働者の賃金が減少し、家計を一人で支えにくくなったこともあるでしょう。若い世代ほど非正規雇用者が増え、正規雇用者でも賃金が上がりにくくなっています。このような中で、子育て世帯の家計収支を見ても、厳しい現状がうかびあがります。
総務省「家計調査」のデータを用いて、夫婦と子ども2人の4人家族について、共働き世帯と専業主婦世帯の家計収支の状況を見ていきましょう。
2000年以降、子育て世帯では、共働き世帯でも専業主婦世帯でも、世帯収入は減少傾向にあります(図2)。
2000年から2017年にかけて、世帯収入は、共働き世帯では月平均64.1万円から62.0万円へ(▲2.1万円)、専業主婦世帯では54.3万円から53.7万円へ(▲5千円)と減少しています。アベノミクスによる雇用環境の改善の影響で、足元では収入が増えた時期もあり、減少幅はさほど大きくないようにも見えるかもしれません。しかし、2000年以降、税・社会保険料の負担が増していることで、実際に使える可処分所得は、収入以上に減少しています。2000年と比べると共働き世帯では▲3.5万円、専業主婦世帯では▲2.4万円減少しています。
使えるお金が減れば、当然ながら消費も減ります。消費支出は共働き世帯では▲3.0万円、専業主婦世帯では▲2.2万円減少しています。消費支出は、可処分所得ほどには減っていませんが、実は貯蓄は減っているわけではありません。
可処分所得から消費支出を差し引いたものが黒字となるわけですが、子育て世帯では、黒字のうち貯蓄に向ける金額が増え、保険や株などの有価証券が減っています。収入が減少傾向にあるのであれば、黒字は保障や投資へ向けた方が合理的な行動と言えますが、「とにかく手元にとどめておきたい」「手元のお金をこれ以上減らしたくない」ということなのかもしれません。