はじめに

必需的消費が増え、選択的消費が減少

消費支出の内訳にも変化があります。2000年以降、共働き世帯でも専業主婦世帯でも、通信費や教育費、食料費など生活に必要不可欠な「必需的消費」の割合が高まる一方、被服費や娯楽費、交際費などの「選択的消費」の割合が低下しています。

就職氷河期世代も多い今の子育て世帯では、収入が伸びにくくなっていることに加えて、将来の社会保障不安もあります。消費支出の内訳の変化から、「生活に必要なもの以外はできるだけ消費をおさえて、貯蓄として手元にとどめておきたい」という様子がうかがえます。

一方で共働き世帯が増えることで伸びている消費領域もあります。共働き世帯と専業主婦世帯の消費支出の内訳を比べると、共働き世帯では教育費や交通・通信費、雑費が専業主婦世帯より多い傾向があります(図3)。

また、食費も若干多くなっています。

共働き世帯の利便性重視志向

まず、消費支出の内訳の2割を超えて最も多い食費について見ていきましょう。食費の内訳を見ると、共働き世帯では専業主婦世帯と比べて調理食品や外食が多く、食材では肉が多く、野菜や果物が少ない傾向があります。また、「家具・家事用品」の内訳にはなりますが、共働き世帯では家事代行サービスの利用もやや多い傾向があります。また、これらの傾向は、妻がパートタイムで働く共働き世帯よりもフルタイムの方が顕著に見られます。

つまり、妻が外で忙しく働いている世帯ほど、家で手間をかけて料理をするよりも、惣菜や外食を利用したり、家事代行サービスを活用するなど、利便性を重視した食生活を送っています。時間がないために、時間短縮ニーズや代行ニーズが強いのでしょう。 

今、スーパーなどを見渡すと、カット野菜や料理キット、無洗米など調理の手間を省く商品のバリエーションが増えています。また、フードカッターや材料を入れてスイッチを押すだけで煮込み料理ができるスロークッカーなどの人気も高まっているようです。食洗機や洗濯乾燥機、ロボット掃除機などの時短家電は、もはや共働き世帯の必須アイテムとも言えるでしょう。

時間のない共働き世帯が増える中で、複数のことを平行してできる「ながら」サービスも増えています。例えば、大型の洗濯機が並ぶ一角に、カフェやペットを洗って乾かす設備が併設したコインランドリーが登場しています。平日にシーツなどの大物を洗濯することが難しい共働き世帯などに向けて、週末にまとめ洗いをしながら、カフェでホっと一息をつくといった利用が想定されているようです。

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