はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
数年後に住宅ローンの半分、変動金利分を繰上げ返済して完済したいと考えています。その後、自宅を賃貸に出して、近くの賃貸マンションに住もうと考えています。そうすると、今の家の返済は半分になるので、住宅ローンの負担が少なくなり、空室の時でも収支が辛くないと思っています。しかし、繰上げ返済をすると手元の現金が減るため、子供の教育費や、もしもの時が心配です。どのような基準で早期返済したらいいのか、アドバイスをいただけると嬉しいです。
私の現状の考えでは、給与収入で貯蓄できる現金は手元に置き、その他の収入をすべて繰上げ返済に充てようと考えています。このような考え方で、よろしいでしょうか。たとえば、「手元の現金が400万円に到達したら、それ以上はすべて繰上げ返済に充ててしまう方がよい」などのアドバイスをいただければ幸いです。
〈相談者プロフィール〉
・男性、40代前半、既婚(妻:専業主婦)、子ども2人(小1、年少)
・世帯収入:給与1,240万円(額面)、その他の収入が230万円~300万円ほど
・毎月の支出目安:月50~60万円(生活費、教育費、税金など含む)
・毎月の貯蓄額:10~50万円(収入から支出を引いた額を貯蓄に回しています)
・資産:現預金300万円、投資信託200万円、FX200万円、確定拠出年金100万円(毎月2万円程度積立)
・負債:住宅ローン3,450万円(変動金利と5年固定金利で2分割。1年前に低金利のネット銀行に借り換え)
内藤: ご質問ありがとうございます。手元にある資産を繰上げ返済に充てるかは、いくつかの条件を確認してから決めていくべきだと思っています。
資産を繰上げ返済に回す前に検討すべきこと
まず、現状のローンの借入条件を確認しましょう。ローンの借入金利が具体的に何%かはわかりませんが、ネット銀行で借り換えしているということは、低利で借り入れていると思われます。
ローン金利が低ければ、金利の支払いもそれほど大きな金額になりません。とすれば、繰上返済を行うよりも、ローン返済は定例の分だけで進めて、手元にある現金や資産を長期的に運用してローン金利より高い運用成果を目指すというのもアリだと思います。
その場合に確認すべきことは、どのような資産運用を行うかです。定期預金や円の債券型資産での運用は高いリターンが期待できません。とはいえ、外貨投資や株式、不動産といったリスク資産への投資では、確実にローン金利より高い運用ができるとは限りません。そのため、どこまでリスクを取るかを決めていかなければなりません。
そして、ご自身のリスク許容度です。ご相談者の場合、毎月のキャッシュフローがかなり大きく、資産もある程度保有していることから、資産状況からみたリスク許容度は比較的大きいと言えます。
自宅を賃貸に出す際のコストをよく確認して
保有されている不動産を賃貸に出すというのも、家賃と周辺の賃貸需要を事前によく調べてからの方が安心です。特にファミリータイプは家賃の利回りが低くなる傾向があり、またテナントが見つかるまでに時間がかかるケースもあります。
賃貸に回しても、自分が払う家賃や契約時の諸費用、引っ越し費用などのコストを考えれば、あまりメリットのないケースも考えられます。引っ越す必要がないのであれば、あえて賃貸に出すメリットがあるのかを、もう一度考えてみてはどうでしょうか。
資産運用するなら、まずはリスク許容度の確認を
私の提案は、現状の保有している自宅に住みながら、ローンの定例返済を続け、保有している資産については、手元に置いておく資金と10年以内に必要になる資金を除いて、資産配分を考えてリスクを取っていく方法です。
毎月の収入では、インデックス型の低コストの投資信託を使って、国内外の株式、債券、REITなどに分散投資して積立を行い、アセットアロケーションを定期的にモニタリングしていきます。また、それと並行して国内の不動産投資も検討してみる価値があると思います。中古のワンルームで、購入後の管理がしっかりした信頼できる会社を見つけることが大切です。
金融資産で運用するか、それとも不動産のような実物資産で運用するかには、さまざまな意見がありますが、私は両方を上手に組み合わせた運用がよいと思っています。
まずは、自分がどのくらいのリスクを取ることができるかを考え、運用金額を設定する。その上で必要ならファイナンシャルプランナーのような資産運用の専門家に相談することをおすすめします。