はじめに

不安定な為替市場が続いています。もともと長期での運用がメインの、筆者の顧客からは特段、心配する声はありませんでしたが、これからはじめたいと相談に訪れる人の中には不安視し、躊躇(ちゅうちょ)する場面もありました。

投資初心者の方でも「知っている」と、共通して口にするワードがあります。それは、「資産分散」です。今回は、資産を分散する必要は本当にあるのか、またその意味について考えてみたいと思います。


分散=通貨分散、商品は迷うことなく「預金」を選ぶ日本人

筆者は女性を対象としたマネーセミナーを定期的に行い、その後の個人的なマネー相談が日々の業務ですが、つくづく感じることがあります。

幼少期にお金や運用についての教育を行わない日本では、給与所得で生活をするほとんどの人が、「資産=お金=紙幣」という連想でしか考えないことです。そしてその連想は、「無意識」のうちに、資産を「預金」という形で保有するのがもっとも安全であると、知らず知らずのうちに、脳にインプットされているのです。

「資産分散」のお話をする中で、まず「預金」を持ち出したのは、預金は一つの金融商品という位置づけであることに、気がついていない人が多いからです。「分散しなきゃ……」と相談に来られる人に、具体的にどのように分散が考えられるか尋ねると、ダントツ1位の回答が「外貨」です。外貨でもさまざまな金融商品があるのですが、さらにどのような商品かと尋ねると、これまた外貨「預金」なのです。

日本人は、銀行にお金を「預ける」のが大好きなんです。

ここで考えを切り替える必要があるポイントは「(外貨で)分散さえしていれば、安心」と漠然と思われていることと、「とにかく預金という商品が安全」と思い込んでいることです。

外貨投資の基本は「為替」と「金利」 正しく理解ができているか?

ではまず、「外貨」について考えてみましょう。

「外貨投資」という言葉があるように、確かに自国と自国以外の通貨を売買することで、資産を増やすことはできます。その要因は、「為替」です。為替は2国間の通貨の価値が日々変動することによって、購入時の為替価格と売却時の為替価格の差が、損益となります。

為替は、自国通貨である「日本円」と「外国の通貨」との「つなひき」のようなイメージをしてください。どちらかが強い弱いのバランスで、綱が動く様は、為替変動そのものです。

また「金利」については、高い政策金利レート国の国債を購入することで得られるもので、本来は「債券投資」で得られるものとして解釈すべきなのですが、多くの方が「外貨建て預金」や、「外貨建て保険」を通し、間接的に購入しているのが実態で、「為替」と「金利」を混同しているケースが多いので、あえて「外貨投資」の内訳にしました。

金利は、債券の発行体が「利子」として払うもので、予想以上に景気が良かった、物価が上がった(インフレが起こった)からといって、その利率を上げてくれるものでもありません。購入時に約束したとおりの額が、約束した期日に支払われます。

外貨建て商品を購入した場合は、その商品の運用を行っている会社が、裏側でその通貨国の国債を購入していると考えてください。その国債の金利水準に合わせた金利で、みなさんが購入した商品は設計されていますし、為替の影響は購入者である皆さんに、そのまま寄与します。

通貨を分散「しなければならい」のではなく、為替益を期待して分散する

この原理を考えると、円だけでなく外貨そのものや、外貨建て商品を購入することで、得られるメリットはあっても、「日本円を少なくし、外貨を持たなければならない」という理由にはならないでしょう。

それは、「円」が非常に信用できる通貨だからです。私たちは世界で信用力の高い国で生活をしていて、信用力の高い通貨を日常で使う通貨としています。ですので、円ではなく外貨で「持たなければいけない」ということはなく、外貨建て商品などを通して「得られる利益を期待して持つ」というのが、正しい解釈であると筆者は思います。

自国の通貨以外で持たなければいけない理由があるとすれば、「自国がデフォルトに陥るリスク」を感じている場合です。デフォルトとは、債券の発行体が、利子や元本の支払いが出来なくなることを指しますが、簡単に言えば「破綻」です。

「いずれ日本は危ない……デフォルトに陥る」と思うのであれば、より安全な国の通貨や国債購入を検討されるべきでしょう。そうなれば、「通貨分散をするべき理由」として、十分に該当しますが、通貨分散を「すべき」と思われている方は、いかがでしょうか?

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