2018年10月25日、安倍首相は訪問先の中国において「対中ODAの終了方針」を明らかにしました。ODA とは、おおまかに言えば「ある国が途上国に対して行う援助」のことを指します(詳しくは後ほど)。

日本の対中ODAは、日中平和友好条約の発効翌年(1979年)に開始。一般にこの援助は、中国に対する戦後賠償の意味合いがあるとされています。しかし中国の経済成長とともに、その意義が薄れることに。2007年には新規の円借款(えんしゃっかん=これも後ほど)を終了。そしてこのたび、2018年度の新規分を最後に無償資金協力・技術協力も終わることになったのです。日本の総拠出額は3兆6500億円にのぼります。

さてこのニュースを見た皆さんの中には、そもそも「ODAや円借款って何?」と思った人も多いのではないでしょうか。「ODAって何の略なの?」とか「円借款って何?」という疑問を抱いている人もいるかもしれません。そこで今回は、ODAや円借款という言葉の意味について掘り下げてみましょう。


直訳では「公的開発援助」

まずはODAの話から。

ODA とはOfficial Development Assistanceを略した言葉。これを直訳すると「公的開発援助」となるのですが、普通は「政府開発援助」と訳します。その意味するところは「政府資金で行われる発展途上国に対する資金協力や技術協力」のことです。

このODAの具体的な実施方法は3種類あります。

第一は「無償資金協力」と呼ばれる方法。これは単純に「資金を贈ること」だと思えば良いでしょう。第二は「有償資金協力」と呼ばれる方法。これは、ほとんどの場合「融資」のことを指します。途上国にとっては元金の返却と利息の支払いが必要な方法なのですが、民間より有利な条件で融資を受けられます。そして第三の方法が「技術協力」。政府資金で専門家を派遣したり、留学生を受け入れたりすることが、これに当たります。

ひょっとしたら、政府開発「援助」という語形から「贈与」のような協力形態を想像してしまう人もいるかも知れません。しかしそれはあくまでODAの一部。実際には「贈与」だけでなく「融資」なども行っているわけです。

ちなみに対中ODAの実績(2016年度まで)は、有償資金協力が約3兆3000億円、無償資金協力が約1600億円、技術協力が1800億円。実際には援助の大部分が「融資」の形をとっています。

円借款は有償資金協力の一種

では「円借款」とはどういう意味なのでしょうか。

まず押さえておきたいのは、円借款が厳密には「有償資金協力の一種」だということ。ただ有償資金協力の大部分は円借款であるため、財務省や外務省の資料でも「有償資金協力(円借款)」とざっくり表記されることがあります。

さてそんな円借款なのですが、このうち「円」の部分は「円建て」を意味しています。そしてもう一方の「借款」の部分が、この場合は「国家間の賃借」を意味するのです。つまり円借款とは「日本政府が途上国に対して円建てで融資すること」となります。ちなみに日本のODAは、その大部分が有償資金協力であり、有償資金協力の大部分が円借款である、という構造です。

日本のODAで「円」借款が大きな地位を占めるのには、ある理由がありました。日本がODAの取り組みを開始したのは、コロンボ計画(南・東南アジア諸国に対する経済協力機関)に加盟した1954年のことなのですが、当時の日本には外貨準備が不足していたのです。例えばドルを贈ろうにも貸そうにも、ドルそのものがありませんでした。

いっぽうで円で融資を行うということは、途上国で実施する事業の発注先が必然的に日本企業になることを意味します(費用を円で支払うため)。このような背景もあり、日本のODAでは円借款が大きな地位を占めたわけです。これは贈与型が中心である欧米型ODAとの大きな違いにもなっています。