はじめに

“日本車”が北米で作られるようになった理由

90年代に行われた日米構造協議の時代には、輸出品目として日本車がやり玉に挙げられました。日本車がアメリカ車の需要を奪っているというのです。

この問題に対しては、2つの方面から議論のすり合せが行われました。ひとつは「とにかく日本車はけしからん」というもので日本車の台数規制をしようという立場。もうひとつはアメリカの雇用を奪うことがけしからんので、日本の自動車メーカーはアメリカに工場を作るべきだという立場でした。

性能がいい日本車はアメリカの大衆から支持されていたので、結果として、後者の考え方が力を持つようになり、「部品の7割がNAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコ)で作られ組み立てられていれば、アメリカ製と認める」という政治決着が行われました。

これにより、日本車メーカーと自動車部品メーカーは大挙して北米に工場を建設することになります。日本から輸出する車は大幅に減り、日本車の大半が「アメリカ製」ということになったのです。

新大統領の怒りは治まるのか?

さて、今回の警告はその定義の見直しをトランプ新大統領が叫び始めたということです。

NAFTA内で製造されていても、それがメキシコ製であればアメリカ市民の雇用を奪っていることに変わりはない。そのような製品について、トランプ政権では「新たな構造協議を始めるぞ」と脅しているようにも感じます。

貿易協定がある以上、大統領とはいえ簡単には「国境税を課す」ことなどできないのですが、一方でさまざまな対抗の武器があります。メキシコに工場を建設した自動車メーカーが不利になるように「行政権限を発動する」ことは可能です。

そして言うことを聞かなければ、スーパー301条のような「条項」を復活させることもできるかもしれません。そうなれば実質的な国境税の誕生です。

トヨタは9日、北米国際自動車ショーの記者会見において、今後5年間で、アメリカに100億ドル(約1兆1,600億円)を投資する方針を発表しました。さらに、トランプ氏の批判に呼応するように、「過去60年間にわたり、米国で220億ドルを投資し、13万6000人を雇用してきた」とアメリカへの経済貢献をアピールします。

これでトランプ氏の“怒り”は治まるのでしょうか? それともさらなる対応が求められるのか。

トランプ氏の胸の内はわかりませんが、あの計算高いフォードが真っ先にメキシコ新工業から撤退した動きを見るに、新大統領就任を前に、なにか大きな動きが起ころうとしているのかもしれません。

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