はじめに

「まんが喫茶ゲラゲラ」、ホットヨガスタジオ「LAVA」、日本初のインドアサイクル専門スタジオ「FEELCYCLE」など、多くの事業を成功させてきたインキュベーション・カンパニー「ベンチャーバンク」。

その事業規模やサービスへの評価と比較して、名前が大きく表に出ることは必ずしも多くない“非上場企業”です。

飛躍する新規事業はいかにして生まれるのか。創業者で代表取締役会長の鷲見貴彦氏に、2004年12月の1号店オープンからわずか1年で20店舗を出店し、日本中にホットヨガのブームを巻き起こした「LAVA」の立ち上げ秘話と、新規事業を成功させるためのポイントについて話を訊きました。


新ビジネスの“種”は尽きることがない

――ベンチャーバンクはこれまで多くの店舗型事業を成功させています。『i人経営』を始めとして立て続けに書籍が刊行されていますが、すでに収益化している事業にこだわらず、新しいサービスを送り出し続けている理由とは何でしょうか?

新規事業には「既存のものを自社で初めて手がける事業」と「世の中にまったく知れ渡っていない新しい事業」の2つのタイプがあると考えます。私たちは後者にこだわっており、それには大きく2つの理由があるんです。

ひとつは、ビジネスパーソンとしてロマンを追求したいから。そしてもうひとつは、ビジネスが成功する確率が高いからです。

リスクが大きいと考える方もいるかもしれませんが、そこに需要があるなら参入障壁も競争もなく、旧態依然とした常識も存在せず、大きな実利を手にすることができます。先行している誰かを追いかけるより、ハードルが低いと考えているんです。

そして、人々が健やかな生活を希求し、心豊かに過ごしたいと願う限り、それに応えるための新たなビジネスの「種」は尽きることがありません。

――貴社が生み出した新事業の代表的な成功例と言えば、日本初のホットヨガスタジオ「LAVA」だと思います。こちらはどのように立ち上げられたのでしょうか。

きっかけはとても小さなことです。2001年当時、妹夫婦が経営している名古屋のバーで、アメリカ人のお客さんが「日本にはホットヨガのスタジオがない」とボヤいていた、という話を聞きました。

当時、アメリカではホットヨガがブームになっていました。これは日本でも流行するのではないかと考え、さっそく試してみることにしたのです。最初は実家の温室でストーブを使い、「室温38℃/湿度65%」に調整して……という、地道な実験を続けていたんですよ。

――そのなかで、ご自身でも効果を実感したと。実際に事業として展開するにはハードルもあったと思いますが、どういう点に苦労されましたか。

ホットヨガ事業の立ち上げを担える人材がいなかったことです。そこで妹夫婦にお願いして、本場ニューヨークに視察に行ってもらいました。そして2003年、名古屋でスタジオを始めたのです。

すると、お客さまからシェイプアップや健康増進に効果があったという声が多数寄せられ、メディアから取材も受けるようになりました。ここで手応えを得て、翌2004年に東京進出。ホットヨガスタジオ「LAVA」として、渋谷に第一号店をオープンするに至りました。

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