日本企業の決算発表シーズンが始まっています。今回は「簡単にできるのに意外と知られていない企業決算分析術」をご紹介します。


決算発表シーズンに突入

日本の上場企業は3ヶ月に1度の「四半期」決算発表が義務付けられています。また、決算発表は決算時期から45日以内に行うよう求められています。日本企業は3月末に本決算を行うところが多いので、3月末から数えて45日以内、つまり5月半ばまでに決算発表を行うことが求められます。

そのため、本決算の発表時期は4月末から5月半ばにかけて集中して行われます。そこから3ヶ月ごと、つまり第1四半期は7月末~8月半ばに、第2四半期は10月末から11月半ばに、第3四半期は1月末から2月半ばにかけて行われます。まずはこのスケジュール感を覚えておいてください。

簡単にできる企業決算分析術とは?

いよいよ本論に入っていきましょう。ずばり企業決算分析術の最大の肝は「企業の業績は3ヶ月ごとに見よ!」ということです。「…企業は3ヶ月ごとに決算を発表するのだから、3ヶ月ごとに見るのは当たり前ではないか!」とお怒りの方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者はいたって真剣ですし、わざわざ今月のコラムで取り上げたのは理由があります。どういうことか具体例を使ってご説明しましょう。

以下は東海地区を中心にステーキチェーンを展開するブロンコビリー(3091)が2018年10月16日に発表した決算短信から一部を抜粋したものです。ブロンコビリーは12月決算を採用しているので、今回発表したのは第3四半期に当たる7~9月の決算です。

売上高は前期比15.5%増の170億円、営業利益は前期比14.8%増の21億円です。増収増益を達成しており、調子が良さそうな決算です。それでは翌日ブロンコビリーの株価はどう反応したのでしょうか?

チャートに赤い印で示したようにブロンコビリーの株価は決算発表の翌日に窓を開けて下落し、その日の下落率は7%近くに達しました。取引時間中には10%以上下げる場面もあったほどで、その日以降も株価は下落基調をたどっています。なぜ一見良い内容に見えたブロンコビリーの株価はここまで下がったのでしょうか?その理由は日本企業の決算短信の発表形式を紐解くと見えてきます。

発表された数値はいつからいつまで?

もう一度、先程のブロンコビリーの決算短信を見てください。よく見ると「平成30年12月期第3四半期の業績(平成30年1月1日~平成30年9月30日)」と書いてあります。そうです、ブロンコビリーが発表した決算数値は1月~9月の9ヶ月分の累計値なのです。1月から6月までの決算数値はすでに発表されていますから、今回新たに発表されたのは7~9月の3ヶ月分のみなのですが、この決算短信からはあくまでも9ヶ月分の累計値しか読み取ることができません。

日本企業は決算短信で業績をその四半期までの「累計値」で発表します。直近の3ヶ月分の数値のみを知るためには、最新の決算短信の数値から1つ前の四半期に発表された決算短信の数値を引き算すれば算出できます。1~9月の9ヶ月分から、1~6月の6ヶ月分の数値を引き算すれば計算できるというわけです。でもそれってすごく面倒ですよね。

そこで筆者はなんとかこの不便を解消し一人でも多くの個人投資家に決算分析を行ってほしいと考え、最初から3ヶ月に分解した数値を取得できるツールを開発しました。それが「マネックス銘柄スカウター」です。マネックス銘柄スカウターでブロンコビリーの「3ヶ月ごとに分解した」業績をご覧ください。

赤の線で囲った最下部の数値が直近7~9月3ヶ月の業績です。売上高は前年同期比10.9%増と堅調に増加していますが、営業利益は前年同期比8.4%減と減少に転じています。そうです、ブロンコビリーの決算は9ヶ月の累計値で見ると増収増益だったのに、直近3ヶ月は増収減益だったのです。減益という部分が嫌気されブロンコビリーの株価は大きく下落したと考えるのが自然です。

このように決算短信の「累計値」だけ見ていてはなかなか見えてこない本当の業績が「3ヶ月に分解する」ことで初めて見えてくる場合があります。ぜひこれからは「累計値」だけでなく「3ヶ月に分解した数値」をチェックするようにしてみてください。

(文:マネックス証券 マーケット・アナリスト 益嶋裕)