はじめに
かつては莫大な利益を生んでいた缶コーヒー
新聞記事を読むと、缶コーヒー市場の縮小はなかなか深刻だ。1月20日の日経の記事では、「かつて1億5千万ケースを販売した日本コカ・コーラの大型商品『ジョージア』も、15年には約1億ケースまで縮んだ」と報じられた。
実は、「ジョージア」はコカ・コーラ世界全体で見たなかでも稼ぎ頭だった。日本コカ・コーラは非公開会社だが、かなり以前に、アメリカの関係者から機密を開示してもらったことがある。当時、ジョージアは驚くほどの莫大な利益をアトランタのコカ・コーラ本社に貢いでいた。
金額の詳細について書くことができないが、イメージだけお伝えすると「有望な上場IT企業が楽に買収できる」くらいの利益をかつてのジョージアは生み出していた。ちょうど飯島直子が宣伝するコートのCMキャンペーンで過去最大の応募があった頃の話だが、それと最近の状況では隔世の感がある。
2015年にネスレ日本も缶コーヒーの生産から撤退。実は、缶コーヒー市場の縮小が他の業界に与える影響も大きい。
缶コーヒー需要の減少がもたらす暗雲
缶コーヒーの需要が減ったひとつの要因は、缶コーヒーとコンビニコーヒーが代替材の関係にあったからだ。気軽に飲めるコーヒーが自動販売機とコンビニそれぞれ売っている。そのなかでコンビニのコーヒーの味が向上したので、自動販売機のコーヒーが相対的に売れなくなった。
この流れがさらに進むと、関係業界への影響も大きいだろう。日本は世界最大の自動販売機大国だが、コーヒー缶の需要が減れば、この先、自動販売機の台数も大きく減っていくはずだ。
自動販売機メーカーといえば、もうひとつ事業の中核だったのが、実はたばこの自動販売機だが、こちらはずいぶん前にタスポが導入されて以来、街中から自動販売機の数が激減した。
そこに缶コーヒーも低迷ということで今、自動販売機メーカーはたいへんな状況にある。さらに自動販売機の設置業者も業界再編の波にさらされている。売れ行きが減ればブランドを統合したり、販売ルートを統合したりして生き残りをかけるほかはない。まわりまわって製缶メーカーの生産量にも大きな影響が出ているそうだ。こうして幅広い業界に悪影響が広がっている。
お役所の“コーヒー感”はやや時代遅れ?
さて、今月はコーヒーにまつわる新聞記事が多かったのだが、そのなかでこんな記事も目に付いた。安倍首相がそろそろ解散総選挙に踏み切るのではと言われているが、ある議員が選挙事務所用にとコーヒーマシンを購入したところ、秘書に「それは選挙違反になります」と止められたというのだ。
日本の公職選挙法では有権者に金品の提供が禁止されている。こういうと当たり前のことなのだが、提供が禁止されている金品のなかに、選挙事務所の来客に提供するコーヒーも含まれているそうなのだ。
選挙法で禁止されていないのは、水とお茶の提供まで。ちょっと極端な言い方をすれば、最高級の玉露はOKでも、インスタントコーヒーは禁止ということだと思われる。
実際に選挙戦ともなれば体力勝負だ。候補者だってコーヒーも飲みたいだろうし、選挙運動員をねぎらって「はい、缶コーヒーを買ってきたよ」といって手渡しもしたいところだが、日本の法律はまだそれを許してはいないのだ。
コーヒーがこれだけ生活に浸透した日本でも、役所にとってはまだコーヒーはぜいたく品ということか。お役所は最後まで変わらないものだという実例を見たような気がする。そんなコーヒーにまつわる3つのニュースだった。