はじめに
アジアで広がる「ブレジャー」導入の動き
このような現状を変えるには、どうすればいいのか。エクスペディアが提案するのが、世界的に徐々に浸透し始めているという「ブレジャー」という概念です。
これはビジネス旅行にレジャーを掛け合わせた造語で、出張にくっつける形で有休を取得するというもの。出張先への往復の交通費や出張中の滞在費は会社に出してもらい、追加で取得した有休日数分の滞在費や交通費は自分が負担する形になります。
日本では「出張に有休をつけた経験がない人」の割合は79%に上りますが、タイやシンガポール、香港などアジア圏を中心に20~30%台と低位。つまり、60~70%台の人がブレジャーを経験したことがあるというわけです。
アジアを中心に広がる「ブレジャー」導入の動き
もちろん、旅行会社であるエクスペディアが提案している話なので、多少は割り引いて考える必要がありそう。それでも、発表イベントに登壇したワーク・ライフバランスの堀江咲智子コンサルタントは「出張に追加して現地を旅することで、その土地のことを深く知ることができれば、仕事にもプラスになる」と、ブレジャーの意義を説きます。
長期休暇の取得は組織力アップにつながる?
そのうえで、日本人が有休を取得しやすくなるための施策として、次のように提案します。
「日本企業では属人的な仕事が多いため、連続で休暇することが難しい。しかし、上司が率先して仕事の見える化や情報共有を進めつつ、若手の休暇づくりをサポートできれば、みんなで連休が取れるチームになります。みんなが当たり前に休みを取れる環境ができると、休んだ時のサポートも当たり前になるはず」
上司が休むと、その仕事を1つ部下がやり、さらにその部下の仕事をもう1つ下の部下がやることになるため、部下にとって視野が広がり、組織としてもプラスの効果が見込めるともいいます。
一方で、ブレジャーの普及にあたって、堀江さんは「どこまでが会社のお金で出せるのか、明確に決めておくことが必要」とも指摘します。有休期間中は自分の行きたいところに行くことになるので、どのエリアまで、何日までOKなのか、きっちり線引きしておくべし、というわけです。
休みを取る時の気まずさは、日本企業に勤めていると一度は経験したことがあるもの。有休が取りやすい組織態勢やきちんとした線引きを定めたうえで、誰もが気持ちよく休みを取得できる雰囲気づくりが、法律の整備以上に求められているのかもしれません。