はじめに
家は大きな買い物。「どんな基準で選んでいいのか分からない」という人は少なくないでしょう。「人生100年時代」といわれる中で、一生自分で住むのではなく、住み替えを前提に資産性のある家を選ぶという考え方も浸透してきています。今買うべき家とは、一体どんな家なのでしょうか。
家選びのコツを、「独身こそ自宅マンションを買いなさい」「マンションは学区で選びなさい」の著者で、不動産情報サイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクト代表取締役の沖有人さんに5回にわたって伺います。2回目は「未就学児ファミリーがマンションを買う場合の選び方」です。
人気の公立小学校区は「値崩れしにくい」
子どもを持つファミリーが優先すべき条件とは、一体どのようなものでしょうか。前回の記事では「駅近」がマストでしたが、ファミリーというと大きな公園があるエリアや子育て世代に使い勝手のいい大型ショッピングモールがあるエリア、庭付きの一戸建てなどが思い浮かびます。
でも、沖さんが勧めるのは、そのどれでもありません。なんと「人気公立小学校の学区内にあるマンション」が最優先すべき条件だというのです。
「たとえば文京区には『3S1K』と呼ばれる4つの人気公立小学校があります。これらの小学校の国立・私立中学校への進学率は4割強。これは東京都全体の平均が2割弱であることと比べて倍以上の数です」と、沖さん。でも、中学校の受験率と家選びにどのように関係があるのでしょうか。
「中学校の受験率が高い小学校へは入学目当ての転居率が高く、定員の2割近くがこうした『公立小移民』の場合も。学区を最優先で探している人のニーズも高いので、マンションも値崩れしにくいのです」(沖さん)。
不動産広告で「○○小学校学区」というフレーズを見かけたことはないでしょうか。これは、このエリアで家を探している人が多く、成約率が高いという証明でもあるそう。「チラシでもネットの広告でも、この学区情報は真っ先に使われることが多いのです」と沖さん。
また、小さな子どもがいる場合は、下の階や隣への騒音を気にしないで済む戸建てを検討するという人も多いでしょう。それに対し、沖さんは「家を資産として買うのなら、マンションにするべき」と力説します。
理由はいくつかありますが、大きなものとして「マンションと違って、戸建ては子育て層にしかニーズがないこと」「木造の戸建てはマンションと比べて減価償却期間が短く、22年が経過すると建物価値がゼロになること」を沖さんは指摘します。需要と供給のバランスが崩れてきていること、また建物に評価がつきにくいことから、戸建ては「売りたくても売れない」という状況になってしまう可能性があるのです。
「人気学区エリアのマンションならすぐに買い手が見つかる可能性も高いのです。中学受験の結果、今の住まいから遠い学校に受かったとしても、マンションを売却して子どもの中学校により近いエリアに引っ越すことも可能です」(沖さん)
「終の住処」と思って家選びをすると、メリットやデメリットを深く考えすぎてなかなか決められない、ということもあるでしょう。特にひとりっ子の場合などは「まずは小学校の6年間だけ住む」と考えて、マンションを探してみてもいいかもしれません。