はじめに
2019年の東証REIT指数は下落リスクが高そう
――2019年もJ-REITの堅調な値動きは続くのでしょうか。
オフィス賃貸市場は引き続き好調で、ファンダメンタルズも良いとみています。ただし、2018年後半からの上昇相場を支えている外国人投資家の買いが年末まで継続すると考えるのは、楽観的過ぎるでしょう。
現在のように、積極的に株を売買しにくい不透明な経済情勢が継続すれば資金流入は続くでしょうが、それでも投資口価格(株式投資の株価に相当)が一定水準を超えれば利益確定されるタイミングはやってきます。
あるいは、何らかのきっかけで株も外貨も叩き売られるようなリスクオフの局面が来れば、J-REITも売られます。逆に、世界経済が好転して株価が上昇するような局面が来るなら、J-REITを手放して株に乗り換える動きが出てくるでしょう。
いずれのシナリオでも、買われたものはいずれ売られるという点は共通しています。J-REITそのもののファンダメンタルズ面に大きな不安要素はないものの、2018年に大きく上昇した銘柄ほど下落リスクが高そうです。
特に外国人の人気が高かった時価総額の大きいオフィス系銘柄は、価格上昇に伴って利回りが3%を切るものも出ています。価格は天井圏に来ているとも考えられます。
――ということは、2019年のREITは下落基調となるのでしょうか。
少なくとも東証REIT指数は下落するとみており、1,650~1,750のレンジで推移すると予想します。東証REIT指数はTOPIX(東証株価指数)と同様に時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすいので、外国人投資家が売りに転じれば下落しやすくなります。
私はこれまで、初心者の方には東証REIT指数に連動し、決算期の異なる3本のETFに分散して投資することを勧めていました。決算が年4回で配当も四半期ごとなので、組み合わせて保有すると毎月分配を受けられるからです。しかし2019年に限っては、東証REIT指数に連動するETFや投資信託は下落リスクが高いでしょう。
ただし、それだけで2019年のJ-REITに投資する魅力がないということにはなりません。現在は一時的に外国人投資家が大きく買い越しているため、その売りを警戒すべき状況にあるだけで、ファンダメンタルズが好調であることは変わりないからです。外国人に買われていない銘柄なら、投資妙味は十分あるともいえます。
外国人に買われていないホテル系が狙い目か
――具体的には、どういう銘柄になりますか。
狙い目はホテル系です。ほとんどの銘柄が過去最高の業績を上げているにもかかわらず、時価総額が小さく、中国リスクもあることから、外国人に不人気で上昇相場に乗れていません。利回りも4%台の魅力的な水準のものが多くあります。
ただし、ホテル系REITは大江戸温泉リート投資法人(銘柄コード:3472)を除いた全銘柄が、業績によって賃料が変動する「変動賃料制」を採用しています。賃料が2年間固定されている住宅やオフィスに比べると、分配金の安定性が低いことは覚えておきましょう。
安定性を重視するなら、ホテルより住居系が向いています。ただし、日本アコモデーションファンド投資法人(3226)、コンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)といった、時価総額が大きくて業績も良い人気銘柄は、値上がりして利回りが3.5%を下回っており、上昇余地も配当の魅力も薄れています。価格が下落するのを気長に待つか、利回りが4%前後ある銘柄の中から選ぶのもよいでしょう。
――利回りが高い銘柄に惹かれてしまうのですが、投資対象は利回りで選んでも大丈夫でしょうか。銘柄を選ぶ際に気を付けることがあれば教えてください。
最近のJ-REITの平均利回りは4.1%です。ざっくりした結論を言うと、投資するなら平均と同程度の利回りの銘柄を選ぶのが無難です。利回りが低すぎる銘柄は保有するメリットが小さく、かといって利回りが高すぎる銘柄に飛びつくのはリスクが高いからです。
中には利回りが6%台、7%台の銘柄もありますが、利回りが高いというのは裏を返せば不人気のため価格が安いということです。平均利回りより1%以上高い銘柄は、相応の理由があります。
典型的なのは、借入金を固定金利ではなく変動金利にしていたり、借り入れの期間が非常に短く設定されているパターンです。こうしたケースでは将来金利が上がると借り換え時の金利負担が重くなり、分配金が減る可能性が大です。
また、高利回りの銘柄は価格が安いので、物件取得のための増資が難しい点も弱点です。低い価格のまま増資すると投資口1口当たり利益の希薄化を招き、増資前の分配金水準を維持できなくなって、さらに売り込まれるといったこともありえます。
かといって増資できない状態が続くと、最悪の場合、他の銘柄と合併を余儀なくされることも……。合併された銘柄は不利な条件を飲まされがちで、多くの場合、分配金が減ってしまいます。要するに、高利回りの銘柄ほど、その分配金水準を維持できる可能性は低いことを肝に銘じる必要があるでしょう。
それでも買うなら、どのタイミング?
――買いタイミングはどう考えればよいでしょうか。
年初はブレグジットや米中貿易戦争の思惑で、あらゆる金融市場が上下に振らされる可能性があります。ブレグジットと対中関税の猶予期間が終わる3月までは様子見が無難です。
J-REITは上場商品なので、株式市場が暴落するような局面ではツレ安しますが、こうした場合でもJ-REITのファンダメンタルズには関係がないことがほとんどです。特に1ヵ月で東証REIT指数が100ポイントも下がるような暴落局面では、過去にも必ず値を戻しており、絶好の買い場となり得ます。
2019年にこうした局面が訪れるかどうかはわかりませんが、こうしたチャンスをのんびり待つのも手ではないでしょうか。