看護師や助産師などの自立の道に進む女性も

産んだ子どもを養子に出して手放すという行為は、女性側の精神を不安定にもさせます。あんさん協の調査では、赤ちゃんを養親に託した女性たちが「苦しみを伴う何ともいえない寂しさがこみあげてきた」(11人)、「赤ちゃんを見るのが怖かった。自分の奥底にしまいたい気持ちが、痛んで辛い」(2人)などの気持ちを感じていることが分かっています。

あんさん協では、こうした女性たちの不安定な心理を考慮し、子どもを手放す決意に変わりがないかを確認するために、女性が出産後に赤ちゃんと一緒に過ごす少しの時間を設けています。

あんさん協事務局の鮫島かをるさんによれば、このワンクッションによって自身の状況を客観的に考え、赤ちゃんを養子に出すことを納得する女性や、逆に自身で育てることを選択する女性もいるそうです。中には看護師や助産師になって自立を目指し、母子で第二の人生をスタートさせる努力家もいるとのことです。

あんさん協が、妊娠によって困難を抱える女性をこのような形で支援していることに、あかりさんは同じ女性として共感するといいます。「もちろん養親の側にしてみれば、生みの女性が出産後に『やっぱり育てたい』と気持ちが変わることで、迎える予定だった赤ちゃんがキャンセルになるわけです。でも本来、子どもは生んだ女性の元で育てられるのがいちばん幸せなわけだから、それならそれでいいと思うんです」(あかりさん)。

一方で、いくら女性が育てることを望んでも、支援や十分な環境が整わない中では母子ともに生活が崩壊してしまいます。生みの女性が自身の状況を客観的に判断し、あえて赤ちゃんを養親に託すという選択をし、その結果として赤ちゃんが養親のもとで幸せに育っていくのであれば、その選択が正しかったといえます。愛里ちゃんも、生みの親と離れたたことで、幸せにたどり着くことができました。

児童福祉法の改正によって特別養子縁組に注目が集まり、一見すると特別養子縁組が「子どもができない夫婦が子どもを持つために利用する制度」であると思われがちです。

しかし、見てきたように特別養子縁組は、「苦しむ母子を救う制度」という意味も持っています。妊娠に悩む女性を福祉的な観点から支援する民間事業者は、あんさん協の他にも複数あります。しかし残念ながら、生みの女性のことをあまり考えない民間事業者も存在します。

特別養子縁組で子どもを迎えることを考えているご夫婦には、この制度が「苦しむ母子を救う制度」でもあることも是非知っていただき、ベストな事業者選びをしてほしいと思います。

[第1回]養子縁組の基礎知識、児童相談所と民間事業者の違いとは?
[第2回]児童相談所を介して2歳半の男児を迎えた家族のケース
[第3回]児童相談所から迎え入れた男児と家族になるまでの日々
[第4回]民間事業者を利用し、約30万円の費用で女の赤ちゃんを迎えた夫妻のケース