はじめに
40年ぶりに相続法が改正され、今年から実際に新法が私たちの生活にかかわってきます。
年を取ってからの相続では、残された高齢の配偶者の安心できる生活を確保することが必要とされていました。また、相続トラブルを防止するはずの法律が、かえって家族間の亀裂を深くすることも少なくなく、法律そのものの見直しも望まれていました。
今までの問題点と、どう変わったか、気を付けるべき点についてお伝えします。
「相続法はどう変わる?」第2回目は寄与分制度の変更について解説します。今まで介護で苦労したのに報われなかった長男の嫁を例に具体的にみてみましょう。
介護で苦労した長男の嫁には、つれない法律だった
たとえばこんな場合。
長年、義父の介護をしてきた長男の嫁は、長男である夫が不慮の事故で亡くなった後も、引き続き同居して、義父の療養看護につとめています。義父には実子の二男や長女がいますが、実家にはめったに寄り付きません。その状態のまま、義父が亡くなったとしても、最後まで看取った長男の嫁には相続財産は何もありません。
民法には寄与分という制度があります。
これは、亡くなった人の財産の増加・維持に特別の寄与や貢献をした相続人がいる場合に、その相続人の相続分にその寄与分、貢献分を上乗せする制度です。この寄与分が認められるのは、今の民法では「相続人」だけです。
事例のように長男の嫁が被相続人の療養介護に尽くしていても、相続人でないため寄与分を認められることはありません。結局、介護に明け暮れた長男の嫁の苦労は報われることもなく泣き寝入りでした。
しかし、国は政策的に在宅介護を推奨していることもあり、療養看護につとめた親族の苦労に報いる法律も作るべきということとなりました。
どう変わる・寄与分制度?
相続人以外の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合は、相続人に対し金銭を請求できることとなります。親族とは、6親等内の血族や3親等内の姻族です。たとえば、亡くなった方の長男の嫁や、孫、兄弟姉妹、おい・めいなどが療養看護につとめる場合が考えられます。残念なことに、事実婚・内縁の妻は対象となりません。
寄与の対価(特別寄与料)は当事者間で協議しますが、話がまとまらないときは家庭裁判所に間に入って金額を決めてもらうこともできます。ただし、時効があり、原則として亡くなってから6か月で家庭裁判所に持ち込むことができなくなります。
具体的な金額や税金は?
では、特別寄与料の額はどのように算出されるでしょう。
おおむね、現在の寄与分の計算と同様の取扱いとなるようです。
寄与分=「療養看護報酬日当額×療養看護日数×裁量割合(0.5~0.8)」
療養看護報酬日当額は、例えば介護報酬基準額などといわれています。
特別寄与料は寄与の時期、方法、程度、相続財産の額等を考慮して算定されます。療養介護につとめた親族は、介護日誌をつけたり、領収書等を保管することがかなり重要なポイントとなります。もめたあげくに、療養看護した寄与者が、家庭裁判所に「金額を決めて」と駆け込んでも、特別寄与料の計算の根拠となるような記録がなければ、裁判官もきっとお手上げです。
特別寄与料をもらった親族の税金はどうなるでしょうか。特別寄与料については相続財産からもらったものとみなされて、相続税の対象となります。一方、寄与料を支払った相続人の相続財産からは、寄与者に支払った金額を差し引いて相続税の計算をすることとされます。
この特別寄与料の制度は平成31年7月1日以後の相続について適用されます。