トマトジュースやケチャップでお馴染みのカゴメ。同社といえば、個人株主を重視することで有名です。自社商品の株主優待は手厚いですし、ホームページ上のファン株主向けのページも充実しています。

そんなカゴメが昨年11月に公表した「コーポレートガバナンス報告書」が、投資専門家の間で関心を集めています。いったい、その理由は何なのか。そして、報告書の内容は個人投資家にとって何を意味しているのか。深掘りしてみます。


そもそもコーポレートガバナンス報告書とは?

本題に入る前に、コーポレートガバナンス報告書についておさらいをしたいと思います。同報告書は企業が自らの統治ルールを対外的に説明するもので、上場会社には開示義務があります。2006年に始まり、改訂のつど、記載内容は変わってきています。

直近で大きく変わったのは2017年8月です。2014年2月に政府が策定した「日本再生戦略」に基づいて、上場会社の行動原則を定めた「コーポレートガバナンスコード」と、機関投資家の行動原則を定めた「スチュワードシップコード」が誕生したのに伴い、報告書に記載すべき内容も大きく変更されたのです。

2つのコードが言わんとすることを簡潔にまとめると、機関投資家は会社にとって耳が痛いことも積極的に会社に意見し、会社も投資家の意見に真摯に耳を傾け、互いに積極的に対話をすることで企業価値を向上させなさい、ということです。

たとえば、第三者の目で企業活動を監視する「社外取締役」の起用や、株主に不利益を与える方針であっても会社側に味方して株主総会を通してしまう、いわゆる“与党株主”の温床となっている「株式持ち合い」の解消は、外国人投資家が日本企業に対してかねてから強く求めてきたことです。

このため、コーポレートガバナンスコードには、社外取締役を置かない、株式の持ち合いも解消しないというのなら、その理由を説明せよ、と書かれています。

測定可能な利益をもたらさないと売却

今回、カゴメのコーポレートガバナンス報告書が専門家の関心を集めたのは、まさにこの株式持ち合いの解消に関する方針です。

多くの場合、持ち合い株については「保有目的が適切かどうかや、保有に伴う利益とリスクを総合的に勘案し、売却するかどうか決めている」といった、抽象的な表現にとどまる説明が大半です。しかし、カゴメの場合はかなり具体的です。

たとえば、株式を持ち合っているA社の期末時点の時価を、A社がカゴメにもたらした利益で割り、カゴメ単体の5年平均ROA(総資産利益率=当期純利益÷総資産)の2倍に達していなければ、A社株は売却対象になります。

このほか、簿価から3割以上下落していたり、カゴメとの年間取引高が1億円未満の会社も対象になります。つまり、数字で測定可能な利益を自社にもたらしているかどうかを判断基準にしていて、なおかつ、そのことを対外的に公表しているのです。

さらに、相手がカゴメの株を売りたいと言ってきたら無条件で承諾し、カゴメが持っているその会社の株もできるだけ速やかに処分するとしています。ここまで踏み込んで開示している会社はかなり希有なので、関心を集めたわけです。

<写真:ロイター/アフロ>