はじめに

個人株主にも機関投資家にも目配り

このことは、投資家に対するカゴメの視野の広さも象徴しているといえます。

個人株主に「カゴメのファンになってほしい」という意思を明確に打ち出していて、決算説明会はアナリストや機関投資家を対象にしたもの以外に、個人株主向けにも開催。個人株主が社長と直接対話できる「社長と語る会」も年4回、実施しています。

いずれも毎回、約3万人いるメルマガ登録者に応募要項を送り、抽選で参加者を選んでいます。これが、かなりの競争倍率なのだそうです。

個人投資家は「その会社を応援したいから株主になる」というのも1つの考え方ですが、機関投資家はとにかく株式投資で利益を出す使命を担っています。そのため、株主優待は個人投資家には大人気でも、機関投資家は歓迎しません。優待に使うお金があるなら、現金配当や自社株購入に使ってほしいからです。

個人株主を大切にする一方で、株式の持ち合い解消についてここまで踏み込んで説明しているということは、機関投資家との対話も怠っていないということを象徴しているといえるのです。

今回の判断は買いか?売りか?

カゴメの株主総数は2018年6月末時点で約18万人いて、頭数では全体の99%が個人株主。保有割合で見ても6割以上が個人株主の保有分です。頭数では個人が圧倒的多数を占めても、保有割合では3割程度というのが一般的な上場企業の姿ですから、ファン株主の重視策が効いていることがわかります。

一時的に株価がかなり高騰した時期もありますが、今ならおおむね30万円前後で1単元を買うことができます。

配当の出し方はかなり慎重です。配当性向は40%を目安としていますが、長期に安定的に出す方針であるため、2018年12月期は31.0%、その前の2017年12月期は26.3%。さらに前の2016年12月期は35.9%と、3期連続で40%を下回っています。ですが、2015年12月期が62.5%なので、4年間でならすと4割に少し届かない程度の水準です。

近年は業績が好調なので、額面通り4割で出せばもっと配当金額は上がるはずなのですが、一方で減配は極力回避したいという考えもあり、業績が下がった時でも減配しないで済むように、という配慮もあるようです。

PER(株価収益率)は26倍を超え、PBR(株価純資産倍率)も2.5倍と、決して割安とはいえない株価水準ではありますが、見る目が厳しい機関投資家からも評価されるガバナンス体制の会社です。個人株主が投資対象とするには、かなり適した銘柄といえるのではないでしょうか。

この記事の感想を教えてください。