はじめに

「リスクをとる」のが株主の役割

これは事業をするあなたにとっては、とてもありがたいことです。商売が不調なときに、配当も取らずに我慢してくれる。そして、もし最終的に失敗してしまったら、一緒に損失を被ってくれる、それが株主です。

事業のリスクを一緒にとってくれているのです。それが株主の重要な役割です。

商品が大ヒットして大きな利益が出たとしましょう。売れ行きが悪くて苦しかった時にも利息を受け取っていた債権者には、決まった利息以上の分け前はありません。事業をしているあなたは、一緒に損をしてあげましょう、と言ってくれた株主に、その分たくさん配当を支払おう、と考えるのは当然のことですね。

株主は「リスクをとる」という役割を果たしたので、成功した時にはその対価を払ってもらえるのです。

株式を買う、株主になるとは、そういうことです。事業主と一緒になって事業のリスクをとる代わりに、利益が出れば出ただけ株主のものになるのです。一方最悪の場合、投資先の会社が事業に失敗して倒産してしまえば、投資したお金はもう戻って来ません。

株式の「価値」

さて、先ほどから「利益は株主のものになる」と書いていますが、その利益はどのようにして投資家である株主の手に渡るのでしょうか。

ここまでに何度か触れていますが、まず配当金として株主の手に入ります。ビジネスが順調ならば多くなりますし、不調ならば減ったり(減配)無くなったり(無配)ということもあります。

しかし、その年あがった利益のすべてが配当金になることはむしろ少なくて、配当されない分は、その後の投資や負債の返済などに使われることになります。ただ、手元に現金として入って来なくても、会社の資産になるので、株主のものであることには変わりありません。

「株主のもの」と言われても、手元に来なければ意味がない、と思う人もいるかもしれません。そこでもう一つ株主の手に入るのが、株価の値上がり益、というわけです。

事業が上手く行って会社の資産が殖えます。それは「株式の価値が上がる」ということです。これを反映して株価が上がる、ということになるのです。

実際の株式市場を日々眺めていると、株価の動きはそれほど単純ではないわけですが、株式の価値の源泉が、会社の行っている事業の利益であることには変わりありません。その「価値」に、株式市場が諸々の事情を反映して、日々刻々と変わる価格をつけている、ということなのです。

美しい宝石が、常に変わらぬ輝きを放っていても、市場でつく値段はその時の状況によって変わる、というのと同じです。

経済状況は大きく変動しますし、会社の事業も山あり谷あり。それを株価は反映して上がったり下がったりするのです。

一見捉えどころのないもののようですが、長い期間にわたってみれば、株価はやはり、株式の価値を反映して動いているのです。

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