日本テレビの情報番組『スッキリ』で"専業主婦の罪悪感"というテーマが特集されました。そこで、しゅふJOB総研のアンケート結果を取り上げていただきました。

アンケートで行った質問は、「専業主婦・主夫であることに、後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことはありますか?」というものです。

このアンケートについては、『専業主婦の価値は2億円以上!? それでも「罪悪感」を感じる理由』にて詳しく紹介しています。

本来、専業主婦であることに罪悪感を覚える必要などないはずです。しかしアンケートを通して尋ねてみることで、人知れず専業主婦であることに罪悪感を抱いてしまっている人が一定数存在していることがわかりました。

そんな"声なき声"は、こちらから耳を傾けなければ決して聞くことはできません。しかし、一度その声を聞くことができれば、社会全体で問題意識を共有することができ、その人たちの心に寄り添ったり、配慮したり、対処法を検討したりすることができます。大切なのは"声なき声"の存在に気づき、耳を傾けることです。


仕事と家庭の両立を妨げているもの

何が仕事と家庭の両立を妨げているのか、という問題が提起されると、必ず出てくるのが保育所不足と待機児童の問題です。

働きたいと思っても預ける先がなく、家から出ることができないという悩みを持つ人はたくさん存在します。「保育園落ちた日本死ね」とつづられたブログが話題になったことなどもあり、保育所不足の問題は日本中の多くの人が認識しています。

では、保育所の問題さえ解決すれば、仕事と家庭の両立は実現するのでしょうか?あるいはそれ以外にも何か足らないことがあるのでしょうか。

そんな疑問を持って、しゅふJOB総研では「仕事と家庭を両立させる上で、必要だと思うことを当てはまるだけ教えてください」というアンケート調査を行いました。

有効回答数713人

「保育所等子どもを預ける場所」は上から6番目という結果で、用意された選択肢の中の上位ではありません。

一見するとこのアンケート結果は、保育所はたいして必要ではない、ということを示唆しているようにも見えます。

聞こえなかった5つの"声"

保育所の必要性が高まるのは子どもが未就学児である一定期間だけです。その時期を抜けると、子どもの預け先で苦労した記憶も薄れていってしまいがちです。

このアンケートに回答した713名の平均年齢は46.6歳。お子さんがいたとしても、就学年齢以上である可能性が高い年代です。にもかかわらず、「保育所等子どもを預ける場所」が必要だと回答する人が4割もいます。

そう考えると、この結果は保育所の必要性を否定するどころか、むしろ保育所を充足させることが如何に重要であるかを示唆するものだと言えるのではないでしょうか。

その上で改めてグラフに目をやると、必要だという声の数が「保育所等子どもを預ける場所」よりも多い項目が5つもあります。

これらの項目は今まで存在していなかったのではありません。厳然と存在していたのに、その声が届かず、未だ十分に認識されていないのです。

なぜ家族の理解や協力が必要なのか?

上から4番目は「ブランクOKの仕事」、5番目は「在宅仕事の充実」でした。専業主婦として職場から離れていた期間をブランクと呼び、ビジネスパーソンとしての評価を下げてしまう風潮はまだまだ根強いものがあります。

しかし実際には、主婦業を通じて磨かれているスキルがあります。しゅふJOB総研では家仕事で培われたスキルを『家オペ力(りょく)』と呼び、能力の一つとして評価すべきだと主張しています。

一方、在宅でできる仕事のバリエーションが増えれば、ブランクと呼ばれる期間を作らずに仕事を続けられる可能性は高まります。また、通勤時間や通勤のための準備時間が短縮される分、仕事と家庭を両立しやすくなります。

上から3番目は「上司や同僚など職場の理解」。およそ6割の人が、仕事と家庭を両立させる上で必要だと回答しています。

たとえばパート職などで同僚より早く帰る場合、必然的に業務の申し送りや連携事項が発生します。そのような環境下で上司や同僚の理解が得られなければ、仕事は当然やりづらくなります。

2番目に多かったのは「家族の理解や協力」です。仕事と家庭を両立させるために職場の理解が必要であることと、家庭内で家族の協力が必要であることとは、理屈としては同じです。心の支えでもあるはずの家族の理解、協力は、得られれば何よりも頼もしく、得られなければ何よりもつらいものだと思います。

仕事がなければ両立する必要もない

では、必要だという声が一番多かったのは何か。8割以上の人が「時間や日数など条件に合う仕事」と答えました。同じ質問を5年前に行った時も、同じ結果でした。いま求人倍率が上昇してバブル期を超えた、などと言われています。しかし、仕事を探している主婦層にその実感はないはずです。

「いま社会に、家庭と両立させることのできる仕事の数は十分足りていると思いますか?」という質問をしてみると、以下の結果となりました。(n=713)

有効回答数713人

「不足している」「とても不足している」を合わせると67.5%。「十分足りている」「おおむね足りている」の合計21.8%の3倍です。社会には、そもそも条件に合う仕事の数が足りていないのです。仕事がなければ、子どもを預ける必要性自体が生じなくなります。フリーコメントには、以下のような声が寄せられました。

「女性進出と言いながらも、派遣や、パートで、小学生の子供が帰宅するまでの、時間で働ける条件のものは、少なく、たまに、そのような求人があっても、早い者勝ちですぐになくなる(40代:パート/アルバイト)」「時短正社員という雇用形態はほとんど皆無。正社員で残業なしというのも皆無(40代:派遣社員)」「45歳以上で扶養範囲内で働ける仕事が少ない(50代:パート/アルバイト)」

ひょっとすると、これらの声は既に知っている当たり前の声と受け取られるかもしれません。しかし実は、その"当たり前感"が盲点となり、仕事の数が足りない、という最も根本的なことの解決がおろそかになってしまっているということはないでしょうか。

解決のヒントは、声なき声の中にある

「条件に合う仕事」が意味することを広く解釈すれば、「ブランクOKの仕事」や「在宅仕事」も含まれてくるはずです。また、「家族の理解や協力」と「上司や同僚など職場の理解」は、ひとまとめにして「周囲の理解と協力」と言うことができます。

以上から、仕事と家庭を両立させる上で必要なこととは何か?という問いに対する答えをまとめてみると3つに集約されると考えます。①条件に合う仕事を充足させること②周囲の理解と協力③保育所等子どもを預ける場所の充足、です。

これらは一つひとつ順番にクリアしていけば良い、という性質の課題ではありません。仮に①に注力し、条件に合う仕事が増えたとしても、周囲の理解・協力がなければストレスはなくなりません。また、どれだけ就業条件が柔軟だったとしても、保育所に預けた方が働きやすい人は一定数いるはずです。

①と②と③の対策は、全く異なるものです。しかしだからこそ、同時並行で解決することも可能だと考えます。むしろ、同時並行で進めた方が①②③が互いに相乗効果を発揮して、一つひとつ順番にクリアしていくよりもずっと早く解決につながる可能性があるのではないでしょうか。

①と③を解決する上で鍵を握っているのは、国と自治体と企業だと思います。では、②について鍵を握っているのは誰なのでしょうか?仕事と家庭を両立させる道を選択する人、専業主婦の道を選択する人、人にはそれぞれ事情があり、秘められた“声なき声”があります。②の鍵を握るのは、そんな“声なき声”の周囲にいる私たち一人ひとりであり、声に傾ける「耳」を持つことができるか否かにかかっているのだと考えます。