はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する大竹のり子(おおたけ・のりこ)氏がお答えします。
新卒で入社したときは、年収が350万円だったので、日々節約をしながら過ごしていました。現在、年収は上がり600万円になりましたが、その分支出も増え、30歳独身なのですが貯金がまったくありません。今のところ、結婚の予定もありません。このままだと将来的にどうなってしまうかのか不安です。
(30代前半 独身 女性)
大竹: 「パーキンソンの法則」をご存じでしょうか?
これは、イギリスの歴史・政治学者であるパーキンソンが、著書の中で「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」と示したものです。
人は、年収が少ないときには「年収が増えれば貯蓄できるのに」と思うものですが、実際のところ、パーキンソンの法則にもあるように年収が増えても状況が変わらない人は多いものです。
このまま放っておいては、貯蓄がないままに歳を重ね、将来への不安は増すばかりです。
現状を変えるためにまずやるべきことが3つあります。
1つ目は「生活費の見直し」、2つ目は「先取り貯蓄のスタート」、そして3つ目は「医療保険への加入」です。
生活費は手取り収入の80%に
もし現在、家計簿をつけていないのであれば、まずは1ヵ月でよいので家計簿をつけ、何にいくら使っているのかを把握しましょう。
そして、そこから削れそうな出費を洗い出し、合計しましょう。
生活費は手取り収入の80%に抑えるのが理想です。一度増えてしまった支出を削るのは簡単ではないかもしれませんが、思い切って「家計のリストラ」を進めることが重要です。
生活費を手取り収入の80%まで落とせたら、残りの20%は先取り貯蓄に回しましょう。
先取り貯蓄を積極的に
ここでのポイントは、使った残りを貯蓄するのではなく、お給料が入ったら先に貯蓄分を取り分けてしまうということです。
勤め先に財形貯蓄があるなら積極的に活用しましょう。なければ自動積立定期預金や貯蓄型の保険でもよいかと思います。
とにかく、自分がなにもしなくても自動的に一定額が積み立てられていく仕組みを作ってしまいましょう。
リスク回避のための医療保険
そして忘れてはならないのが医療保険への加入です。すでに加入済みなら問題ありませんが、もし医療保険に加入していないのであれば、1日でも早く申し込みをしましょう。
病気やケガはいつなんどきやってくるかわかりません。健康保険には高額療養費制度がありますが、自己負担額は最大で1ヵ月約14万円に及びます。
「貯蓄がまったくない」という言葉をそのまま受け取るのであれば、入院・手術となったときに借り入れをしないと医療費が払えないという状況に陥ってしまいかねません。30代になると、成人病や女性特有の病気にかかるリスクも増えてきます。
貯蓄がないからこそ、保険の機能を最大限に活かして備えておくことが必要です。