今年に入り、NYダウ平均(米国株)は5%超上昇していますが、一方で日経平均株価(日本株)の上昇は約3%に留まっています。また、為替(ドル/円)も110円台を目前にして、109円台での足踏みが続いています(執筆時点)。

日本株の戻りが鈍い理由としては、円高による業績悪化懸念があると考えています。為替を決定する要因にはさまざまなものがありますが、今回は私が重視している4つの考え方をご紹介しながら、為替の現状について解説したいと思います。


為替を円安にする要因は?

その4つとは、(1)投資採算、(2)需給、(3)供給量、(4)経済合理性です。

まず、投資採算です。この考え方からは「投資採算(例:債券の金利)が高い国の通貨は上昇する」との結論が導けます。採算性が高い通貨で運用したい人が増えるため、その通貨は上昇すると考えるわけです。

仮に日米の金利差が拡大する場合など、その投資採算の違いが拡大する、あるいは拡大するとの予想があれば、円から米ドルに資金が移動し米ドル高・円安要因となります。

ここで、2017年および2018年以降の米10年国債利回りと米ドル/円の推移を見てみましょう。2018年の前半の局面を除くと、日本の金利が一定程度に固定される中、米金利上昇時に円安、米金利低下時に円高となる局面が多かったことがわかります。

2番目は、通貨の供給量です。この考え方からは、中央銀行による通貨の供給量が増加すれば、その通貨は下落しやすいとの結論が導かれます。「通貨の供給量」が「実体経済が必要とするお金の量(需要)」を上回れば、通貨価値が下落すると考えるのです。

現在、日本銀行はペースは縮小していますが、通貨供給量の拡大を継続しています。この点は円安要因になると思われます。

為替を円高にする要因は?

3番目は、通貨の需給に注目した考え方です。需給に注目した考え方からは、貿易収支黒字国など、外貨が余剰である国の通貨は上昇しやすいとの結論が導けます。

対米国で、日本の貿易収支が黒字傾向であることは、米ドル安・円高要因と考えます。対米貿易収支が黒字(余剰)である場合、円ベースでのコストを支払うことなどを目的として、企業などは米ドルを円に交換する可能性が高く、円高要因となるわけです。

なお、需給に注目した場合、モノ以外にも証券投資などによる需給もあります。たとえば、2018年12月は海外投資家が日本株を大きく売り越していますが、これは原則としては円安要因として働くはずです。

なぜなら、すべての海外投資家が「為替リスクをヘッジして日本株」に投資をしていたわけではないでしょうから、日本株の売却によって得た円は米ドルのような外貨に転換され、円売り・外貨買いの取引が行われると思われるからです(しかし、現状は円安にはなっていません)。

最後は、経済合理性に注目した考え方です。通貨の変動リスクを負わず、日本より金利が高い米1年満期の国債で運用するためには、(a)円を米ドルに交換したうえで、(b)米1年満期の国債に投資し、(c)1年後に得られる米ドルを円に交換する取引(先渡取引)を投資開始時点においてまとめて行う必要があります。

通貨の変動リスクを負わない場合、その経済合理性から円で運用した場合と同じ投資成果になります。金利差による果実は、理論的には「(c)先渡取引の交換レート」が不利になることで相殺されます。それでは、(a)(b)の取引のみを行い、「(c)1年後に米ドルを円に交換する取引の契約」を行わなかった場合はどうなるのでしょうか。

実はこの場合でも、金利差分だけ高金利通貨は下落する(低金利通貨は上昇する)との考え方があり、これを「カバーなし金利平価説」といいます。高金利国は低金利国との対比でみれば通常高インフレ国であるため、「インフレの分だけ通貨価値が減少する」との直感と整合的な結論です。

以上の考え方に基づくと、米金利は円金利よりも高いですから、円高要因となります。

カギは米国金利動向

これまで見てきた4つの考え方から、現在の通貨供給量は円安、経済合理性は円高要因であると判断することが可能であると思われます。

これらの要因の変化に注目した場合、需給は日米貿易交渉などで大きく変化する可能性はあるものの、現在の均衡を揺るがす最も先行きが不透明な要因は「(1)投資採算」、すなわち米国の金利動向であり、私は引き続き米連邦準備制度理事会(FRB)の動向を含む米金利の動きが米ドル/円に大きな影響を与えると考えます。

ただし、2018年の前半は米国金利が上昇したにもかかわらず、円高が進展しています。これは日本企業の期末要因(3月決算)が影響している可能性があり、本年も3月末に向けた期末要因による円高リスクに注意が必要と考えます。

<文:チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行>