はじめに

平成の消費を振り返る、若者がモノを買わなくなった時代」では、若者の価値観の変化について捉えました。平成の消費については、若者以外にもいくつか切り口がありますが、今回は「女性」について注目しました。

平成は働く女性が増えた時代です。女性の大学進学率が短大進学率を上回り、男性と同じように学校を選び、同じように就職活動をして、同じように働き出す女性が増えました。未婚化も進み、「おひとりさま」消費にも注目が集まるようになりました。

一方で結婚後も出産後もキレイでいることは当り前になり、独身時代のようにファッションや趣味を楽しむ女性が増えました。共働きがスタンダードになった世代では、妻が夫並みに稼ぐ「パワーカップル」も増え、都心の高級マンション市場などを牽引しています。

平成は女性の消費力が増した時代とも言えるでしょう。今回は、女性の変化について振り返りたいと思います。


平成8年に女性の大学進学率が短大進学率を上回る

今でこそ女性も男性と同じように進学先を選ぶことが一般的になりましたが、平成のはじめは「女の子だから成績が良くても短大」という時代でした。

進学率を見ると、女性の大学進学率が短大進学率を上回ったのは平成8年(1996年)からです(図1)。現在では大学進学率は男性が56.3%、女性が50.1%と、女性が男性に追随するようになりました。


(資料)文部科学省「学校基本調査」より作成

平成のはじめの10年間、1990年代は女性の就労環境にとって大きな変化がありました。Windows95の発売をきっかけにオフィスのIT化が急速に進むとともに、女性で多かった一般事務職の採用が絞られるようになりました。

ITによる代替に加えて、派遣労働者にも代替されるようになりました。「労働者派遣法」は、制定当初は通訳や秘書などの特定の業務、つまり、正社員の業務を代替するおそれの少ないもののみが適用対象でしたが、1996年には適用対象が拡大され、1999年には原則自由化されました。また、景気低迷も進む中で、一般事務職の採用はますます絞られるようになりました。

一方で、1999年の「男女雇用機会均等法」の改正では、これまで努力義務であった女性に対する差別が全面的に禁止されるようになりました。募集・採用や配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇における差別が禁止されるとともに、職種の名称も性別的に中立な表現で募集するために、保母は保育士、看護婦は看護師と改められたのもこのタイミングです。

男性のサポート的な働き方をする仕事が減る一方で、女性の社会進出に向けた基盤が整備されてきました。このような中で、男性と同じように学校を選び、男性と同じように就職活動をして、男性と同じように働く女性が増えていきました。

おひとりさま消費の盛り上がり

外に出てバリバリ働く女性が増える一方で、未婚率も上昇していきました。ひと昔前は30代後半ともなれば結婚していることが当たり前でした。

しかし、現在では30代後半の男性35.0%、女性23.9%が未婚です。30代後半の未婚者は決してマイノリティではありません。生涯未婚率も上昇し、今の日本は男性の4人に1人、女性の7人に1人が生涯未婚となっています(以上、「平成27年国勢調査」)。

未婚化の要因には価値観の変化や男性の経済力の変化など、いくつもの要因があります。必ずしも働く女性が増えたことが大きな要因とは言えませんが、未婚女性の就業率が既婚女性よりも高いことは明らかです(図2)。


(注)有配偶の15~19歳はサンプル数が少ないため数値なし
(資料)総務省「平成30年労働力調査」より作成

可処分所得が多く消費意欲が旺盛な独身女性の消費は昭和の時代から注目されてきましたが、年齢が20代などで比較的若く、ファッションなどのモノが中心、コトであっても女友達との海外旅行など行動の単位がグループであったように思います。あくまで結婚前の独身時代の消費という印象です。

一方で平成時代の「おひとりさま消費」は、年齢は30代や40代へ広がり、消費の対象はモノよりもコト、そして、コトの行動単位が一人になった点が大きな変化といえるでしょう。

例えば、40代の「おひとりさま」に向けて、2012年に「DRESS」というファッション誌が創刊されました。

カバーモデルは米倉涼子さんでした。現在ではWEBのみの展開ですが、雑誌不況の中で特定年代の独身女性に向けた新雑誌が創刊されたことは、企業が新たな消費セグメントを認知したという点で、非常に意味のあることだと思います。

コト消費について見ると、女性の一人旅はめずらしいものではなくなりました。例えば、今、「楽天トラベル」や「じゃらんnet」などで「おひとりさま」と検索すると、300件以上がヒットします。

また、旅だけでなく、「ひとりカラオケ」「ひとり焼肉」といった「ひとり○○」サービスが様々な領域で広がり、世間的にも認知されるようになってきました。平成は「ひとりでできるコト」が増えた時代です。

さらに、SNSによって共通の趣味を持った他人と簡単に繋がれるようになりました。インスタグラムでよく目にする「#○○好きさんと繋がりたい」というハッシュタグには、自分の好きなものや趣味が入ります。

例えば、好きな芸能人の名前を入れるとファン同士で繋がることができ、約束をして一緒にコンサートなどへ行ったりすることもあるようです。独身者に限りませんが、SNSによって、一人で参加できるコトがさらに広がりました。

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