はじめに
パワーカップルの消費力
平成の大きな変化として、もう1点、お伝えしたいのが、「パワーカップル」です。共働きが当たり前になった世代では、妻が夫並みの経済力を持つ共働き夫婦も増えています。「パワーカップル」は、数年前から、都心の高級マンション市場など不動産業界を中心に新しい魅力的な消費者層として注目されているようです。
「パワーカップル」については明確な定義はありませんが、私が分析をする時は「夫婦ともに年収700万円以上」としています。
それは、所得税の税率区分が20%から23%へと変わるのが年収695万円であること、そして、共働きといっても男性のサポート的な働き方をする女性も多いと思いますが、年収700万円以上であれば大半は男性同様の働き方だと考えるためです。
このパワーカップル世帯数は、全体からするとごくわずかですが、じわじわと増えています(図5)。
(資料)総務省「労働力調査」より作成
パワーカップルにはやはり消費余力があります。ニッセイ基礎研究所の調査によると、妻の年収別に暮らし向きの余裕感をとらえると、年収が高いほど暮らし向きに「たいへん余裕がある」あるいは「余裕がある」と答える割合が増えます。
また、妻が年収1千万円以上では「たいへん余裕がある」割合が3割程度にもなります。そして、妻の年収別に見ても、パワーカップル妻は「外食」や「海外旅行」などの高額消費意欲が強い傾向があります(図6)。
(資料)ニッセイ基礎研究所
また、図5を見ると、パワーカップルの半分以上は子どものいる夫婦です。都市部では、1時間5千円を越える子どもの習いごと送迎タクシーや、月10万円越える習いごと付きの学童保育が高額にも関わらず人気のようですが、そこにはパワーカップルの存在があるのではないでしょうか。
女性消費の課題~働きたい女性が働けるようになること
平成は働く女性が増えることで、新しい消費者層が登場するとともに、妻や母の消費にも変化が見られた時代でした。ただし、女性が働き続ける上で、まだまだ多くの課題があります。
最大のネックは、やはり出産後です。正社員の第1子出産後の就業継続率は順調に伸びており、直近で約7割ですが、育児休業や時間短縮勤務等を取りにくいパートや派遣社員として働く女性の就業継続率は4分の1程度です(国立社会保障人口問題研究所「出生動向基本調査」)。
昨年1月に改正された「育児・介護休業法」では、有期契約労働者の育児休業取得要件が緩和されるなど、制度面の充実が図られているところですが、正社員でなくても育児休業を利用できることの認知度は高くないようです。
また、制度は知っていても、言い出しにくい雰囲気があるといった問題もあるでしょう。
一方で制度が整っているはずの正社員でも出産後に3割が退職しているわけですが、これはなぜでしょうか。
1つは仕事と育児の両立にむけた職場の制度環境は整っていても、家庭環境が整っていないことがあるのでしょう。夫婦の家事・育児分担は妻に大きく偏っています。6歳未満の子供を持つ夫婦の1日当りの家事・育児関連時間は、夫が1.1時間、妻が7.7時間となっています(内閣府「平成29年版男女共同参画白書」)。
大卒女性の生涯所得は、2人子どもを生んで、育休や時短を利用しても平均2億円を越えます 。一方で、一旦離職しパートで再就職すると、生涯所得は6千万円程度です。この差は、女性自身にとっても大きなものですが、パートナーである男性にとっても、日本の消費全体にとっても大きなものです。
日本は、この先、少子高齢化・人口減少が進むことで、消費市場も縮小する見込みです。しかし、女性が希望通り働ける環境が整い、女性の消費力が増すことができれば、まだまだ消費市場は膨らむ余地があるでしょう。平成の次の時代、女性が希望通り働ける時代になるように期待したいものです。