はじめに

「自分専用」を売りに利用客は拡大

冒頭でも触れたように、多くの競合メーカーが参入しているサブスクサービスですが、その多くはレンタルで対応しています。一方、レナウンの着ルダケはスーツ1セットを利用するのはその客だけ。他の客が着用したスーツを回される心配がないのが売りです。

こうした特長が受けたのか、昨年7月のローンチ以来、客数は順調に伸びていて、解約した客はほとんどいないといいます。利用客からは「値段の割にモノが良い」「コーディネートガイドを見てスーツとネクタイを決めればいいので楽」「食べ過ぎた時に、ウエストに付いたアジャスターが役立つ」といった声が寄せられているそうです。

これまでの利用客のうち、75%が月額4,800円のベーシックなプランを選択。30~50代が全体の87%を占め、中でも40代が40%と最多になっています。当初は法人向けサービスとしてスタートした着ルダケですが、現在は8~9割が個人客だということです。


「着ルダケ」の年代別利用状況

レナウンの中川智博カスタマーリレーション&コーポレートコミュニケーション統括部長は「スーツ業界全体の販売が芳しくない中、これまでリーチできていなかった客層にアプローチできている」と、手応えを口にします。

「当社で展開している『ダーバン』を購入する客層は、ビジネスマンの中でも一握り。それ以外にもスーツを着て仕事をする方はたくさんいるので、このサービスで顧客の裾野を広げたい」(同)

当初は販売とのカニバリが懸念されていましたが、現状はうまくすみ分けができているといいます。レナウンでは、既存の販売に加えて、サブスクビジネスをもう1つの収益柱に育てていきたい考えです。

今後は“ジャケスラ”への対応も検討

それでも、ここまで順調に成長している着ルダケでも、まだ採算ベースには乗っていないといいます。計画生産で在庫を用意していたため、サイズによっては断らざるをえない客もいたそうです。

そこで、今後の対応として、中国の関連工場で早期に受注生産を開始。サイズをはじめとした、さまざまな顧客の要望に対応できる態勢を整える方針です。また、オフィスのカジュアル化を受けて、ジャケットとスラックスのセットなど、サービスのバリエーションも増やしていきたいとしています。


「これまでリーチできていなかった客層にアプローチできている」と自信を示す中川統括部長(中央)

事業スタートから5年目を迎える2022年までに、利用者1万人を目標に掲げる着ルダケ。競合他社が脱落していく我慢比べの状況下、どう立ち回っていくのか。顧客ニーズのスムーズな吸い上げとサービスへの落とし込みの巧拙が、事業の今後を左右しそうです。

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