はじめに

浪人生には別の観点が必要

川浪弁護士:他方で、浪人生という理由で減点することについては、異なる観点から分析しなければなりません。誰でも平等に「現役」受験する機会が形式的に付与されているからです。

この点で、「性別」「容姿」とは異なりますので、減点する「合理的な理由」の有無は、「性別」「容姿」の場合と比べて緩やかに判断されると思います。しかしながら、浪人生と言っても一浪の人は現役生と比べて1歳しか年齢は異なりません(余談ですが、高校で1年留年した現役生は留年していない一浪生と年齢は同じになります。)

このような場合、1歳という年齢の差が学生としての資質や学力の有無に関係するかどうかの判断は困難ではないでしょうか。したがって、「浪人生」という理由だけで減点することも許されないと考えます。

もっとも、18歳で受験する現役学生と(浪人生と言っていいのかどうかわかりませんが)定年後しばらくしてから、例えば、90歳になってから受験する浪人生とでは、将来的な記憶力や体力に差があることは明白といえるでしょうし、大学で得た経験・知識を社会に還元することを前提とした場合(卒業後に医師となって働くことを前提に教育する医学部はその典型でしょう。)、将来の稼動年数を考慮するとこの場合に差を設けることには合理的な理由があると思います。

すなわち、「現役生」か「浪人生」かという点に着目して、「浪人生」という理由で一律に減点することには合理的な理由は見出しがたいと思いますが、一定の年齢を基準に差を設けることには合理性があり、不合理な「差別」にあたらないと思います。もっとも、こういう場合には、受験資格に年齢制限を設けるか、「○歳以上の場合には○点減点する。」という選考基準を募集要項等で予め明示しておくのが望ましいでしょう。

なお、上記裁判例も

「(大学が)合格のためには、知力、体力、気力が必要であるとし、医師として活躍するには、六年間の課程に加えて、臨床研修二年間も含め卒業
後一〇年くらいの経験が必要であることを考慮するように入学試験応募者に説明しているが、このような点を考慮することには合理性があり、受験
者を合理的な理由なく単に年齢によって差別することとはならない」

と判示しており、年齢を考慮すること自体が直ちに「差別」に該当するとは言っていません

「女性だから」「容姿が良いから」という理由で減点や加点をすることは、「差別」該当する可能性が高いとのこと。不合理な入学試験は行われていないと思われますが、仮に事態が発覚した場合は、不当性を訴えることもできそうですね。

取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

取材・文:櫻井哲夫

(この記事はシェアしたくなる法律相談所からの転載です)

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