はじめに

出店ラッシュで既存店の競争力が低下

肉メニューを中核に、サラダバーやかまどご飯をセットにするという現在の業態は2004年に生まれました。それ以降、客単価が上がり、ブロンコビリーとしての収益性は右肩上がりに。2005年度以来、14年連続で経常利益率2ケタを維持するなど、外食業界でもトップクラスの高収益を誇ってきました。

しかし、その勢いもここ数年は頭打ち。店舗網が拡大する中で製造原価や販促費が上がったという面もありますが、毎年の新規出店に追われるあまり、外食チェーンの収益源である既存店の営業力が低下した影響が大きいと、会社側は見ています。

2018年12月末時点の店舗数は135店ですが、過去5年間の店舗純増数は50。特に2018年度は16出店と、過去最多の新規出店を記録しました。「新店に追われて、既存店の経営・数値管理がおざなりになってしまいました」(竹市社長)。

こうした反省から、「今年は商品と人の質の拡充を進めます」と竹市社長は宣言。これによって、2019年度の既存店は前期並みの売上高をキープ。そこに新規出店を上乗せすることで、会社全体で売上高245億円(前期比9.2%増)、営業利益27.3億円(同5.1%増)を目指します。

はたして、竹市社長の言う「商品と人の質の拡充」を、具体的にどうやって達成していくのでしょうか。

ステーキの価格幅を広げるワケ

現在、ブロンコビリーで一番人気は、ステーキハウスでありながら、「ブロンコハンバーグ」という商品になっています。そうした事情もあり、創業以来40年の歴史がある東海地区でこそステーキハウスとして認知されていますが、この10年で店舗網が急拡大した関東地区では「ハンバーグとサラダバーがおいしいレストラン」として認識されています。

結果として、多くの客が1,000円台のハンバーグを注文。一部には2,000~3,000円台のステーキを頼む客もいますが、この2つの客層にクッキリと分かれる形で顧客が固定化し、なかなか客単価が上がりづらい構造になっています。

こうした現状を変えるべく、ハンバーグでは昨年11月に前出の黒毛和牛ハンバーグを開発しましたが、同時に、ステーキの新メニュー開発においては、客のニーズに応えきれていないという側面も見えてきました。

そこで新たに投入したのが、今回の1,000円台ステーキの新メニューというわけです。2,000~3,000円台が中心だったステーキの価格帯を下に広げることで、これまで1,000円台のハンバーグを食べていた客が同じ価格帯のステーキに手を伸ばし、徐々に価格帯を上げていってくれることが期待されています。

また、今回の新メニューによって、ハンバーグとステーキの価格がたすき掛けになり、これまではステーキばかり食べていた客に、たまにはハンバーグを食べてもらうことで、メニューの流動性を高め、来店頻度を引き上げることを狙っています。

出店ペースを抑え、人材育成に注力

商品政策の一方で、「人の質の拡充」も急務です。現在のブロンコビリーは離職率が高く、約500人の社員のうち、半分が経験の浅い入社3年未満。こうした台所事情の中、前期は高い収益性の見込める立地への出店が多かったため、優秀な人材を新店に投入せざるをえず、結果として既存店が弱体化したという反省がありました。

今期は出店を10に抑えると同時に、不採算店を中心に5店舗を撤退。関東と東海では出店数を絞り込み、中長期でリピート客が定着する店づくりを進めるための人材育成に力を注ぐ考えです。

商品と店舗運営の両面でリピーター増加のための施策を進め、ステーキハウスとしてのブランド力を上げ、2~3年をかけて徐々に販促費を下げていく絵を会社側は描きます。そのうえで、ステーキハウスとしての認知度が高まれば、「ステーキハウスが出すハンバーグ」として、人気商品であるハンバーグのブランド力も向上するという算段です。

昨今の肉ブームやサラダバーを出す店舗が増えてきたことで、以前はオンリーワンだったブロンコビリーの業態も、今では「他より少し良い」くらいの業態になっていると、竹市社長は分析。「ファン層から一定の支持がもらえるようになれば、もう一度、出店を加速していける」と言葉を継ぎます。

ステーキハウスへの“原点回帰”を進め、再び独自の立ち位置を見いだすことができるか。その最初の一歩を担う1,000円台ステーキの果たす役割は、想像以上に大きそうです。

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