はじめに
月に10万円を稼ぐ人も…
エリクラのビジネスモデルは、次のようになっています。
まずアウトソースしたい業務を抱えるクライアント企業がリクルートに依頼し、リクルートが仕事を差配。利用者が業務を請け負い、現場に向かい、業務を完了します。その結果を写真付きでリクルートに報告し、それをクライアント企業が確認。利用者に報酬が支払われ、その一部がリクルートに手数料として入る仕組みです。
利用者が受け取る報酬額は50~5,000円と、業務内容や業務時間によってさまざま。平均で500~600円となっています。平均的な利用者の報酬額を時給で換算すると約1,650円で、バイトの平均時給と比べても水準としては低くありません。毎日5件ずつ、ほぼ毎日働いて、月に10万円を稼いでいる人もいるといいます。
仕事の応募は、夜中を除けば、曜日や時間帯による偏りはないとのこと。エリクラを立ち上げたリクルート・次世代事業開発室の今里亮介さんは「生活スタイルが多様化する中で、仕事をしたいニーズは万遍なくあるようです」と分析します。
エリクラはなぜ生まれたのか
エリクラは、リクルートの不動産情報サービス「SUUMO」の広告営業を担当していた、今里さんと中村光秀さんの2人が考案しました。きっかけは、2016年春頃に営業先の不動産管理会社で聞いた悩みでした。
管理会社はオーナーからマンションやアパートの点検・清掃を受託しているわけですが、そのすべてに自社の社員を使っていては、自動車のリース代やガソリン代。保険料に加えて、社員の採用コストなどもかかってしまう。近所に住む主婦やシニアがやってくれたほうが、移動に伴うコストを抑えられるうえ、品質も高そうだ、というものでした。
他方、リクルートワークス研究所の調査によると、働きたいけれど仕事探しをあきらめた「みなし失業者」は2015年時点で397万人にも上ります。その理由は「勤務時間・賃金が希望に合う仕事がない」「近くに仕事がない」「自分の知識・能力に合う仕事がない」というものが主でした。
現状の求人サービスだとマッチングしない両者を結び付けられれば、新たなビジネスが生まれるのではないか――。そんな発想から生まれたのが「エリアに点在する仕事を近所の人に提供する」というビジネスモデルでした。
2017年8月にリクルート社内で起案し、同年10月から検証作業がスタート。翌2018年7月から東京都狛江市限定で試行を始め、80棟のアパート、マンションの点検・清掃業務を受託しました。
「写真とコメント付きで業務内容が確認できるので安心」とクライアント企業からも好評だったことから、今回、サービス提供エリアを東京都、神奈川県、埼玉県の一部エリアまで拡大し、本格的な実証実験を始めることになりました。
今後はどんな仕事が増えていく?
エリクラの具体的な目標は非公表ですが、社内で設定したKPI(重要業績評価指標)をクリアしていけば、正式に事業化される可能性もあるといいます。
今後については業務のラインナップ拡充が不可欠という認識で、駐車場や店舗の点検・清掃などに広げていきたい考えです。飲食店やコンビニの品出し業務なども視野に入れています。
また、利用者の仕事の質や報告スピード、働いたエリアなどの情報を蓄積し、それを元に、適した仕事が表示される機能を搭載するなど、サービスの磨き込みも進めていく方針です。
実質賃金の伸び悩みや年金不安など、個人の懐具合も先行き不透明感が高まっている昨今。エリクラの展開エリアが広がっていけば、身近な場所でスキマ時間を有効活用して、少しでも家計の足しにできる機会が増えるかもしれません。