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中国の自動車市場が“冬の時代”へ、残された成長余地を探る

消費喚起政策効果より構造的変化に注目

昨年、中国の新車販売台数は前年比2.8%減の2,808万台と前年割れになりました。28年連続で拡大してきた世界最大の自動車市場に変調の兆しが表れています。中国の自動車市場で今、何が起こっているのでしょうか。


2019年も厳しい滑り出し

2018年に新車販売台数が前年割れとなった中国の自動車市場ですが、2019年に入ってからもその環境は厳しいようです。直近2月18日に発表された1月の新車販売台数は前年同期比15.8%減の237万台と低迷し続けています(下図)。

中国の新車販売台数の推移(月間ベース)

国内消費の代表格である新車販売が落ち込んだ主な原因としては、(1)2018年から小型自動車の購入税優遇措置が終了したこと、(2)米中貿易摩擦の激化によって消費者の購買意欲が減退したこと、(3)昨年前半に行った金融引き締めが自動車の売れ行きに悪影響を与えたことなどが考えられます。

政府当局の消費振興策も効果は限定的か

新車販売の低迷を受けて、中国政府は2019年1月29日に自動車や家電の買い替え補助を柱とする消費振興策を発表しました。

 消費振興策の中で自動車に関連する具体的な政策案として、(1)旧排ガス基準の車と農村部のオート三輪の買い替えに対して補助金を支給し、高性能な新エネルギー車向けの補助金を拡大する、(2)人気の高いピックアップ・トラックの都市走行制限を緩和する、(3)中古車取引に携わる企業に適用される付加価値税(消費税)の税率を3%から2%に引き下げる、(4)各地域の状況に応じて自動車購入制限を緩和する、などの項目が盛り込まれました。

これらの政策案は、買い替えの促進や規制の緩和を図る項目が多く、期待されていた購入税の減税措置の再導入に関する言及もなかったため、新車販売に対する刺激効果は限定的と見ています。

今後、中国政府は自動車に対して更なる政策支援を打ち出す可能性があるものの、過去の減税措置で既にかなりの駆け込み需要が発生していたことを考慮すると、2019年の新車販売台数が大きく伸びる見込みは薄いと思います。

「ダブル・クレジット制度」で新エネルギー車に成長余地

中国の自動車業界は、全体の販売台数で見るとあまり成長が見込めないものの、ガソリン車から新エネルギー車にシフトしていくという構造的な変化に着目すれば、新エネルギー車(プラグイン・ハイブリット車、電気自動車、燃料電池車)の成長余地は大きいと見ています。

例えば、昨年中国の新エネルギー車の販売台数は前年比62%増の126万台に達し、今年に入ってからも1月の販売台数が前年同期比138%増の9.6万台と好調な滑り出しを見せました。

足元、中国政府は新エネルギー車向けの補助金を段階的に減らしているが、その一方で今年から注目のエコカー政策である「ダブル・クレジット制度」の完全導入が始まるため、この政策を追い風に新エネルギー車の普及が加速する可能性があります。

「ダブル・クレジット制度」とは、中国政府が2017年9月に発表したエコカー政策です。同制度は、国内で3万台以上の乗用車を生産もしくは輸入するメーカーに対して、(1)生産車種の重量に応じて定められた平均燃費の基準を満たすことと、(2)新エネルギー車の生産目標を達成(生産台数全体の10%に相当する点数を獲得)することを義務付けています。

政府当局は、(1)燃費基準と(2)新エネルギー車の生産目標を超過達成したメーカーに対して点数を加算し、逆に未達だったメーカーに対して点数を減算することで、各メーカーが保有する燃費と新エネルギー車の点数(ダブル・クレジット)を算出します。

そして、点数がマイナスだったメーカーは、罰則として未達だった分の点数を超過達成したメーカーから購入するか、自社で新エネルギー車生産して点数を稼ぐ必要があります。また、メーカー間で点数を売買する場合、取引できるのは新エネルギー車の点数のみとなっています。

このように、ダブル・クレジット制度は乗用車メーカーの間で競争原理を働かせることによって、ガソリン車の低燃費化と新エネルギー車の普及を図っていくと狙いがあります。また、政府当局が定める平均燃費の基準と新エネルギー車の生産目標は、今後年々引き上げられる予定で、メーカー各社は継続的に燃費の改善と新エネルギー車の生産拡大を図っていくことが求められています。

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