はじめに

ダークプールでは取引所よりもお得に取引できる?

個人投資家にとってダークプールを利用する一番のメリットは取引所の価格よりも有利に取引できる可能性があることです。例えば、あなたが買い注文を出した場合、取引所の価格に比べて安い値段で約定する可能性があり、売り注文を出した場合には取引所よりも高い値段での約定が期待できるのです。

その理由は、ダークプールでは取引所よりも細かい値幅で価格が決定されるためです。取引所では1円単位で取引される銘柄が、ダークプールでは0.1円以下の単位で取引されている場合もあります。

特に機関投資家は、取引所の値段よりほんのわずかに高く買い注文を出すことで、多くの人が株式を売ってくれることを期待します。また、早く注文を捌ける方が価格変動リスクを抑えることができるため、数銭から数十銭程度での誤差を許容できるのです。

ダークプールで、取引所と比べてお得な値段で取引が期待できる理由には、機関投資家特有の事情が大きいようです。

法整備が未熟な点にリスクも

しかし、日本ではダークプールをめぐる法整備が未熟な点がリスクとなりえます。

日本ではダークプールが原因で行政処分に至った例は未だ確認されていません。しかし、東京証券取引所の「ダーク・プールへの対応について」では、2018年だけでオーストラリア・香港・米国で少なくとも4回以上ダークプールに関して処分事例があったと報告されています。

さらに、欧州、カナダをはじめとした諸外国では、ダークプールでは取引所の価格よりも一定以上価格が改善するか、ベストな価格で取引を執行することが求められています。しかし、日本では現在そのようなルールはありませんし、市場としての情報開示規制もありません。市場としての情報とは、個別の注文内容ではなく、全体としてどのような実態があったかという情報の開示義務です。

今回の「市場ワーキング・グループ」では、ダークプールの法整備を検討している段階にあります。現状では、ダークプールのサービスを取り扱う証券会社に、価格が改善しているのかという情報の開示を求めることなどが議題になっています。

規制というと、ダークプールを取り締まるという趣旨のように見えてしまいます。しかし、その内実は投資家を保護のための法整備といって差し支えないでしょう。日本の投資家も他国と同じようにダークプールを投資方法の一つとして当たり前に検討できる下地を醸成しているのです。

証券会社の中には、すでに取引所の価格と比較して、有利な価格での取引が期待できる場合にはダークプール経由で発注する仕組みを取るところもあります。今回の法整備により、投資家保護や情報の開示に関するルールが規定されれば、ダークプールがより一般的になっていくでしょう。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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