はじめに
「住みたい街ランキング」で人気の街と聞くと、あなたはどこを思い浮かべますか?
不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営する株式会社ネクストが行った2017年「住みたい街ランキング」で、「吉祥寺」「恵比寿」「自由が丘」などの不動の人気エリアを抑えて、堂々の1位になったのは「池袋」でした。
歓楽街としてのイメージが色濃く、少し危ない匂いがした池袋の街は今、変貌を遂げようとしています。
1位「池袋」の驚き
日本最大級の不動産物件掲載数を誇る「HOME'S」が、ユーザーを対象に調査した2017年首都圏版「住みたい街ランキング」。借りて住みたい街のランキングには、これまでよく目にした住みたい街とは少し違った駅名がならび、意外な結果となりました。
定番人気エリアの「吉祥寺」「恵比寿」「自由が丘」など、キラキラした街を抑えて、1位に輝いたのは「池袋」です。2位「三軒茶屋」、3位「武蔵小杉」、4位「川崎」と続きます。
常勝王者だった「吉祥寺」は9位。「恵比寿」は7位という順位になりました。
昨年、同社が公表した「借りて住みたい街」ランキングの1位は「吉祥寺」、2位「横浜」、3位「恵比寿」でした。どうして1年でこれほど大きくランキングの顔ぶれが変化したのでしょうか?
これまでの華やかなランキングと異なる結果について、同社担当者にたずねると、「今回は、これまでのアンケートベースでのランキングではなく、当社のWebサイト上で実際にお問い合わせいただいた件数をもとに集計いたしました。そのため、以前より、現実的な駅名がランクインしています」と、そのからくりを教えてくれました。
ユーザーの検索・問合せ数をベースに集計したということで、実際に“探されている街や駅”が上位に姿を表したことになります。
その街に抱くイメージから家賃・広さなど現実的な条件までユーザーが賃貸物件を選ぶ際の条件はさまざま。
同社の家賃相場情報を元に、ワンルーム・駅徒歩10分以内の同条件で算出した場合、昨年の上位3都市の家賃相場は「吉祥寺」6.96万円、「横浜」7.58万円、「恵比寿」11.78万円。
それに対し、今年の1位「池袋」は7.93万円、2位「三軒茶屋」8.14万円、3位「武蔵小杉」6.75万円でした。
こうして比較してみると、キラキラした住みたい街と、実際に探されている街の家賃の差が、新旧ランキングのギャップを生み出しているわけではなさそうです。
では、吉祥寺より選ばれる街・池袋にはどんな魅力があるのでしょうか?
1日の平均乗車人数全国2位、交通の便の魅力
同社は、「池袋」が1位に躍り出た要因を、「ビッグターミナルとしての交通の利便性、駅周辺の就業・就学・買い物・飲食などの利便性、そして市街地としての事業集積性が高いことにある」と考察します。
JR東日本の調査によると、JR池袋駅の1日の平均乗車人数はおよそ55万7千人。その数は新宿に続いて全国2位を誇ります。
JR線、西武池袋線、東武東上線など合計8線が乗り入れている巨大ターミナルとして位置し、2013年には副都心線と東横線の相互直通運転が始まったことで、池袋は都内各所へ抜群の交通利便性を誇るようになりました。
同様に、今年3位にランクインした「武蔵小杉」や4位「川崎」、8位「大宮」なども、「駅の拠点性の高さや交通および生活利便性が評価された結果、ランキング上位に登場したと考えられます」と同社は分析します。
確かに実際に家を借りて住むとなると、毎日の通学・通勤を基盤に考える人が多いことは間違いないでしょう。
国際アート・カルチャー都市へ
また、今、池袋の街も、大きく変わりつつあります。
過去にドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)で描かれたように若者がたむろする治安の悪いイメージや、北口西口に風俗店が立ち並ぶ猥雑な街の印象が強かった池袋は、積極的に“住みたい”とアンケートで名前を挙げる好印象な場所ではなかったかもしれません。
それが、現在、「国際アート・カルチャー都市」を標榜し、変貌を遂げようとしているのです。
昨年5月、有名建築家・隈研吾さんが手がけた地上49階・地下3階のマンション一体型の豊島区役所新庁舎が完成しました。おしゃれな新庁舎上の分譲マンション(322戸)は、最高倍率18倍、約7週間で全戸完売となり、話題を呼びました。
旧庁舎の跡地も、国家戦略特区の特例を受けて再開発が進んでいます。テーマは「誰もが輝く劇場都市」。2020年には、大規模なシネコン、カンファレンスホール、歌舞伎やミュージカルに対応した1,300席の新ホールなどで構成される大型複合施設が完成する予定です。
さらに、池袋駅西口は三菱地所を事業協力者とした大規模な再開発が決定。東武百貨店・西口公園・バスターミナルの一帯に3棟の超高層ビルを建設する計画です。
以前はホームレス支援のために炊き出しを行っていた、繁華街のなかにある南池袋公園は昨年4月にリニューアル。芝生を敷き詰めて開放感のある空間にしたところ、子連れのファミリー層が頻繁に訪れる場所に転じました。
こうした変化が、新しい池袋の街をかたちづくり始めています。
豊島区・高野区長はマニフェストにて「世界レベルの住みよいまち、豊島」をつくると未来を語ります。
来年以降のランキングでも、名実ともに住みたい街としてのポテンシャルを高める池袋の存在感が大きくなりそうです。
不動産・住宅情報サイト『HOME'S』調べ
【対象期間】2016年1月1日 ~ 2016年12月31日
【対象者】HOME'Sユーザー 首都圏は東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県を対象
【集計方法】HOME'Sに掲載された賃貸物件/購入物件のうち、問合せの多かった駅名をそれぞれ集計
【分析】HOME’S総研