はじめに

ほんの少しですが昇給を果たしたAさん。しかし、給与の支給日に振り込まれた金額を確認すると、先月より減っていました。不思議に思っていつもはあまり見ることのない給与明細を見てみたら、控除項目の中に「介護保険」という項目があることに気がつきました。これが金額減の原因だったのです。

40歳になると誰もが加入することになる介護保険。介護保険法により介護保険料の支払いが義務付けられ、その支払いは一生涯続きます。そんな介護保険制度について解説します。


高齢者や家族を社会で支える介護保険制度

介護保険制度は、高齢者やその家族を社会全体で支えていくための制度です。介護が必要となった高齢者が介護サービスを一部(1~3割)の負担で受けられたり、その家族が介護のため働けなくなったときに介護休業給付金を受け取ったりすることができます。平成9年に介護保険法が成立し、平成12年に施行されました。

被保険者は、第1号被保険者(65歳以上の人)と第2号被保険者(40歳から64歳まで)に分けられています。「第1号被保険者」は要介護・要支援状態になったとき原因を問わず保障を受けられますが、「第2号被保険者」は加齢に起因する特定の病気により介護状態になったときに限定されています。

40歳になると天引きが始まる介護保険料

介護保険料の支払いがはじまるタイミングは、40歳になる誕生日の前日が属する月からです。気をつけたいのが1日生まれの人です。たとえば4月1日生まれの人の場合、誕生日である4月1日の前日は3月31日となるため、3月分から介護保険料の支払いがはじまります。

介護保険料は、健康保険や厚生年金の保険料と同じく、毎月の給与から天引きされます。多くの会社は「翌月徴収」といって当月分の介護保険料を翌月の給与から天引きします。そのため、40歳の誕生日が4月1日の人は3月分の介護保険料から支払いがはじまるため、4月に支給される給与から、40歳の誕生日が4月2日の人は4月分の介護保険料から支払いがはじまるため、5月に支給される給与から天引きされることになります。

近い将来8000円!? 値上がり傾向の介護保険料

介護保険料は、標準報酬月額に介護保険料率を掛けて算出します。

標準報酬月額とは、毎年4月から6月までの通勤手当や残業代などを含めた給与(額面)の3か月間の平均に基づいた等級ごとに設定されている金額のことをいいます。また賞与が支給された場合も、給与と同じく賞与の額に基づいた等級ごとに設定されている標準賞与額に介護険料率を掛けて算出します。

料率は協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、平成31年2月分(3月支給の給与から天引き)までは1.57%、平成31年3月分(4月支給の給与から天引き)からは1.73%となっています。

この料率から算出された介護保険料は、健康保険や厚生年金保険の保険料と同じく会社と本人が半分ずつ負担する労使折半となります。たとえば、標準報酬月額が30万円の場合、平成31年3月分(4月支給の給与から天引き)から変更になる料率1.73%を掛けた5190円の半分である2595円が本人負担の介護保険料となります。

厚生労働省は、高齢化の進展により2025年の介護保険料は現在の3倍以上の8165円になると推計しています。一生涯払い続ける介護保険料は金額も大きくなるため、ライフプランやキャッシュフロー表を作成する際には外せない項目となります。

まとめ

40代は住宅ローンや教育費など、目の前の支出に意識が向きがちです。そこに介護保険料も加わるのは大変だと感じるかもしれません。

とはいえ、介護保険の被保険者となる40歳は、同時に介護が急にはじまる可能性が高まる年齢になってきたということでもあります。 介護保険制度の被保険者となったタイミングで、介護についてじっくり考えてみるのも良いかもしれません。

田中 友加
「自分らしい生き方」を応援!お金のパーソナルトレーナー
自動車販売業に従事した後、税理法人にて経営コンサルティング業へ。その後、IT関連会社を設立、取締役に就任。2016年にFP資格を取得、「FPリファイン」を創業。並行して独立系FP事務所にて、家計改善を中心とした幅広い相談業務を2年間経験。
「実現しやすく・分かりやすく」をモットーに、賢い資産形成のサポートを活動中。日商簿記1級。FP Cafe登録パートナー

元記事:40歳になったら手取りが減った…正体は「介護保険料」 2019年からさらに負担上昇

(この記事はMochaからの転載です)

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