はじめに

不妊で子どもを望む日本の夫婦が、外国籍の子どもと特別養子縁組を結んで親子になるケースが近年、目立ってきています。

グローバル化の進展によって日本に滞在する外国人が増えていることなどが背景にありますが、実態はどうなっているのでしょうか。

児童相談所から紹介された外国籍のAちゃん(当時生後8か月、女の子)と特別養子縁組を通じて親子になった高原芳樹さん・マリさん(現在ともに42歳、仮名)夫妻のケースから、詳しくお伝えしていきます。


「ご紹介したい外国籍の女の赤ちゃんがいます」

会社員の芳樹さんと、外国籍のマリさんは、学生時代に知り合い国際結婚をしたご夫婦です。芳樹さんは企業のエンジニアとして、マリさんは教員として働き続けてきましたが、プライベートでは長年、不妊に悩んできました。

結婚10年を機に、特別養子縁組で子どもを迎えることを決断。2015年11月、自宅近くの児童相談所に相談をし、特別養子縁組を目指す「養子縁組里親」に登録しました。

高原さん夫妻が暮らす自治体の場合、養子縁組里親として児童相談所に登録する際、子どもの性別や年齢のほか、子どもの国籍が外国籍でも受け入れるかどうかの希望も聞かれます。

国際結婚の高原さん夫妻には、多様な国籍の友人がいます。そのため外国籍にも違和感はなく、子どもの「性別や国籍は問わない」との希望を出して登録を済ませました。するとさっそく翌月、児相から「ご紹介したい外国籍の女の赤ちゃんがいます。発達は順調です」という電話があったそうです。

「児童相談所の特別養子縁組は人気で、登録してもなかなか紹介されないと聞いていましたので、こんなに早くに紹介されるとは願ってもないことでした」(芳樹さん)

それから2か月後。高原さん夫妻は、乳児院を初めて訪れ、Aちゃんと面会をすることができました。ミルクを良く飲み、乳児院の床を元気にはいはいで前進するAちゃんを見て、高原さん夫妻は安心したといいます。

一方で、このときはじめて、夫妻はAちゃんが養子に出されることになった経緯を知りました。生みの親と暮らせなくなったAちゃんの複雑な事情の一端を知ることになりましたが、交流を重ねるたびに、満面の笑みを見せてくれるようになったAちゃんの姿に触れて、芳樹さんは「この子を絶対に幸せにしなければならない」と心に誓ったといいます。

高原さん夫妻との特別養子縁組を経て現在、3歳になったAちゃんは、保育園に通いながら元気に暮らしています。高原さん夫妻は、ときどき家族旅行を楽しみながら、「Aちゃんには、とにかく健康第一に、そして将来は国際的に活躍する女性になっていってくれれば」と考えています。

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