はじめに
あの有名料理人が軽食を監修
そして、今回のリニューアルの目玉となるのが、沿線の地域食材を取り入れた軽食。日本料理「一凛」の店主で、テレビ番組にも出演している橋本幹造さんが監修しました。東北・北海道新幹線、北陸新幹線でそれぞれ上り・下りと、計4種類が用意されています。
自らが監修した軽食について説明する橋本さん
3月までは和軽食と洋軽食の2種類を用意していますが、4月からは橋本さんが監修した和軽食のみが提供されます。その意図について、JR東日本・営業部の深見真悟課長は「2種類あると、どうしても廃棄ロスが起きていました。廃棄ロスが社会問題化する中で、それを削減しつつ、内容を良くしたかった」と明かします。
廃棄ロスが抑制できる分、食材の品質にはこれまで以上にこだわったといいます。「選択肢が減る分、満足していただける内容にしました」と、深見課長は自信を示します。
こだわったのは食材だけではありません。飲食中の体験にも細かい工夫が感じられます。
軽食に付いているお品書きにはQRコードが載っています。これを読み取ると、監修者の橋本さんがお品書きを説明する動画が見られる仕組みになっているのです。
お品書きのQRコードを読み取ると、説明動画が見られる仕組み
「良いレストランに行くと、料理長が料理の説明をしてくれて、料理だけでなく、その後ろにあるストーリーも楽しむことができます。それと同じ体験が車内でもできるよう、取り入れてみました」(深見課長)
これらの軽食やお酒は、アテンダントに頼めば、好きな時に提供してもらえます。軽食と茶菓については3ヵ月ごとにメニューが変更となり、7月からは橋本さんと岩崎さんが監修した新たなメニューが楽しめます。
背景に“公共交通機関の高級化”
これまでも車内で提供するビールの銘柄変更など、細かいマイナーチェンジはあったというグランクラス。しかし、軽食や茶菓を含めて、提供するサービス全般を変えるのは、開業から9年を経て、初めてになります。
その背景にあるのが、公共交通機関に押し寄せる“高級化の波”です。2013年にJR九州が運行を開始した「ななつ星 in 九州」を皮切りに、2017年にはJR東日本が前出の「四季島」、JR西日本が「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」を投入。国内の複数の鉄道事業者が豪華クルーズトレインの運行を始めています。
こうした高級化の波は、鉄道だけでなく、バスにも拡大しています。
2016年に神姫観光バスが「ゆい PRIMA」の運行を始めると、翌2017年にはJTBが座席が10席のみという「ロイヤルロード・プレミアム」の新型車両を導入。今年に入ってからも、クラブツーリズムがバーカウンター付きの豪華バスを使ったツアーを開始したほか、奈良交通が「朱雀」、阪急交通社が「クリスタルクルーザー『菫』」を投入する予定です。
こうした流れの中で、“新幹線のファーストクラス”も後れを取るわけにはいきません。ちょうど3月から上越新幹線でもグランクラスが導入(シートのみ)されたこともあり、「改めてグランクラスの良さをPRする」(深見課長)ため、今回の大規模リニューアルに踏み切ったのでした。