はじめに

飛行機との違いを出すための工夫?

グランクラスの良さをPRするには、どんなサービスを提供したらいいのか――。JR東日本の社内で検討が始まったのは、昨年の夏前だったといいます。

魅力を最大化するには、実際にグランクラスに乗っている人に考えてもらうのが良いのではないか。そんな考えに至ったJR東日本が監修を依頼したのが、金沢にも店舗を構えており、頻繁にグランクラスを利用していた橋本さんでした。

具体的なプランを検討するにあたってJR東日本がこだわったのは、飛行機のファーストクラスとどう違いを持たせるか、という点。飛行機では味わえない、新幹線だから味わえるものとして、橋本さんが着目したのが、その土地土地で変わっていく車窓の風景でした。

「車窓の風景が変わっていくのをイメージして、縦に沿線ごとの食材を並べて、その土地その土地を感じてもらえる工夫を施しました」(橋本さん)


北陸新幹線の下り列車で提供される軽食

その土地ごとの魅力を体感してもらうというのは、前出の四季島で提供している乗客体験にも通じる考え方。JR東日本の深見課長は「四季島のノウハウもフィードバックしました」と説明します。

たとえば、軽食に使用しているお米は、東北・北海道新幹線であれば岩手県産「たかたのゆめ」、北陸新幹線であれば福井県産「いちほまれ」と、それぞれの沿線の希少米を採用。「通常の駅弁だと予算の関係から使えない食材を散りばめました」(橋本さん)。

また、同じお米を使っていても、上りと下りで酢飯と白飯を使い分けています。グランクラスの乗客は、行きも帰りも、また月に何度も乗る人が多いそうです。こうした乗客のニーズに対応するには、軽食にもバリエーションが必要だろうという配慮から、細かい工夫を施しました。

欲張りなニーズを取り込めるか

JR東日本の深見課長によると、今回のリニューアルは「満足度の向上が一番の目的」。ビジネスの利用者だけでなく、プライベートでのリピーターを増やしていきたいといいます。

具体的には、東北・北海道新幹線を例にとると、現状の利用率は50%程度。今回のリニューアルを機に、現状からジャンプアップさせたい考えです。

運賃は、東北新幹線の東京-新青森間で2万7,110円、北陸新幹線の東京-金沢間で2万6,970円(乗車賃込み)。普通指定席だと、それぞれ1万7,350円、1万4,120円なので、5~9割増しの料金になっています。


ゆったりとくつろげるグランクラスの座席

最近の旅行トレンドとしては、観光地を巡るのではなく、豪華車両などで移動手段自体を満喫したり、宿泊そのものを楽しむ「おこもり宿」などが人気に。旅行に対するニーズは、これまで以上に多様化しています。

今回のグランクラスの車内サービスリニューアルは、いうなれば、目的地はもちろん、移動時間も楽しみたいという欲張りなニーズを取り込もうという動き。はたして、その狙いが奏功するのか。最大10連休となるゴールデンウィークが直近の試金石となりそうです。

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