はじめに
ソニーがライブ事業の拡充に力を入れています。
音楽市場では、2014年にCDなどの音楽ソフトの生産額をライブ売上が上回りました。現在の年間ライブ市場は3,000億円を超え、5年前の倍の大きさにまで成長。ソニー・ミュージックエンタテインメントは日本で唯一のライブホールを全国展開する子会社を持っています。
ソニーはライブ市場の先になにを狙っているのでしょうか?
ライブホールの新設を進めるソニー
ソニー・ミュージックエンタテインメントの100%子会社、Zeepが大阪に2つ目のライブホールをオープンしました。Zeepのミュージックホールは、これまで東京に2つ、そして大阪、名古屋、札幌に事業展開しています。さらに今後、横浜、神戸、京都にもホールの開設を予定しています。
Zeppのホールは収容人数としてライブハウスより大きく、コンサートホールよりも少ない2,000人規模で、中堅以上の音楽アーティストにとっては比較的集客しやすい規模のライブ会場になります。
以前はライブといえば音楽CDを売るための宣伝の場だったのですが、現在のようにCDが売れない時代にはライブが音楽市場の収益の柱になっています。ぴあ総研によると、2015年の音楽ライブ市場は3,405億円。前年比で25%も増加した、堂々たる成長市場です。
成長市場を取り込むために全国にライブホールを展開するソニーですが、実は急ピッチで展開を進める理由には、業界内のある不安解消もあります。
全国的なコンサートホールの不足問題
音楽市場が感じている不安、それはこれから全国的に訪れるホールや劇場の不足問題です。全国には2,200の公設の音楽ホールや劇場があるのですが、その2割の施設で今後、建て替えが必要になるのです。
実際、都内では渋谷公会堂、日本青年館、日比谷公会堂が改修に入り、サントリーホールも改修が予定されています。改修であれば一時的な閉鎖で済みますが、青山劇場や五反田ゆうぽうとのように事業閉鎖になる施設も出始めています。将来的に中野サンプラザも解体が予定されています。
全国的に考えると、改修よりも閉鎖に向かう施設が少なくないとみられています。きっかけは民主党政権の下で行われた事業仕分けで、これらの施設の維持に費用がかかりすぎていることが問題になったこと。多くの公設ホールが近い将来、改修が課題となり、資金が続かない場合は閉鎖に向かうとみられています。
昨年はたまたま、収容人数が大きいさいたまスーパーアリーナと横浜アリーナの改修が重なり「2016年問題」と呼ばれましたが、将来的にはそれ以上の規模で「箱」が足りなくなる事態が予想されているのです。
その次のタイミングとしては東京オリンピックの開催で首都圏の大箱が使えなくなる「2020年問題」が懸念されています。
維持費が収益を上回るような地方都市の公設ホールが閉鎖に向かうのは仕方ないにせよ、ライブ市場は成長市場ですから、少なくとも市場規模が大きい大都市圏で「箱」不足がビジネスチャンスを失わせるのはもったいないことです。
そこでソニーは中規模のライブホールの建設に力を入れているのです。