はじめに

“空白地帯”を狙い撃てるか

Tポイントは2003年に始まり、さまざまな店舗で使える「共通ポイント」の先駆け的な存在です。CCCマーケティングによると、過去1年間にTポイントを使ったアクティブユーザーは6,888万人。強みは、日本の20代の83.1%にあたる1,040万人、30代の80.3%にあたる1,205万人がポイントを保有しているという、若年層への高い浸透度です。

SBI証券の狙いはここにあります。発表会見で、SBI証券の高村正人社長は「ネオモバイル証券は若年層、投資初心者に特化する。Tポイントをきっかけに若年層を取り込み、投資体験を深め、SBIで投資をしてもらう。投資における成長をサポートする」と明言しました。

集合写真
SBIネオモバイル証券の小川社長(左から2人目)、SBI証券の高村社長(同3人目)

同社は450万口座とネット証券で最大のシェアを持ちますが、20代のユーザーは7%にすぎません。「若年層、投資初心者層にアプローチしたが、完全にはリーチしきれなかった」(同)と言います。

CCCマーケティングの調査によると、投資に興味があるが投資をしない理由として、最も多かったのが、「失敗したときが怖い」(57.1%)というもの。2番目が「元手がない」(44.0%)。3番目は「どこで始めればいいかわからない」(43.3%)。これらを一気に解決し、若い世代を取り込むのが、ネオモバイル証券というわけです。

絶対に負けられない戦いである理由

CCCマーケティングにも、今回の連携によるメリットは大きいとみられます。

近年、楽天の「楽天ポイント」、NTTドコモの「dポイント」など他の共通ポイントの存在感が大きくなり、Tポイントをやめる店も出ています。すでにドトール・コーヒーがTポイントからの脱退を決めているほか、ファミリーマートも今秋から楽天ポイントとdポイントも使えるようにすると発表しています。

「Tポイント離れ」が続く中、SBIとの連携によって新たな価値を提供することができれば、再び存在感を高められる可能性があります。

SBI証券の高村社長は会見で、「SBIグループとTポイントの経済圏の融合、拡大を進めていきたい。今回は1つのきっかけだ」と述べました。今後、SBIグループの法人顧客に対してTポイントの導入を提案するなど、さまざまな連携を考えているということです。

経済圏
両社が描く「SBI+Tポイント経済圏」の拡大戦略

ネット証券最大手と巨大ポイントが組むことで、どんなシナジーが生み出せるのか。そして、それによって投資に目覚める若者は増えるのか。SBI、CCC、両社にとって絶対に負けられない戦いであることは確かです。

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