はじめに

子供の医療支援のほか、貧困や環境問題など地球規模で抱える社会的課題の解決を図ることに投資資金の使途を限定した投資は「インパクト・インベストメント」と呼ばれています。最近よく耳にする「SDGs」を意識した投資の一形態です。

実は今、株式投資の世界でも、このSDGsに熱い視線が注がれ始めています。その背景と今後の展望について考察してみたいと思います。


世界的に関心が高まるSDGs

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、先進国と途上国が共同で取り組むべき国際社会全体の開発目標として掲げられました。

2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された、2000年から2015年までの「ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)」で積み残した貧困や飢餓などの課題に加え、新たに国際社会の共通課題を含めた目標です。

具体的には、貧困や飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、安全な水とトイレなど社会的課題、エネルギーや働き甲斐・経済成長、技術革新など経済的課題、気候変動や海・陸の豊かさ、平和など地球環境の課題など全部で17の分野、169項目のターゲットが盛り込まれました。

MDGsが発展途上国を中心とした貧困削減を基本理念とし、トップダウンアプローチをとったのに対して、SDGsは基本理念を先進国から途上国に至るまで「誰一人取り残さない」とし、各国政府、国際機関、学術機関、市民社会、民間企業などからのボトムアップアプローチをとります。

SDGsが株式市場からも注目される事情

とはいえ、目標達成に必要とされる資金は、MDGsの年間約400億~600億ドルから、SDGsは年間約5兆~7兆ドルへと大きく膨らみました。途上国に限定しても、必要資金は毎年3.3兆~4.5兆ドルにのぼります(2014年国連貿易開発会議の報告書)。

これまで年平均1.4兆ドルの投資が行われてきましたが、これでは毎年1.9兆~3.1兆ドル(平均2.5兆ドル)の資金が不足する試算となります。逆に見れば、SDGs関連セクターは今後、投資を呼び込む成長余地の大きいセクターとして注目されるでしょう。

関連セクター

投資資金不足の解決の担い手として期待されるのが、ESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)側面に配慮した企業や事業に積極的に投資する投資家でしょう。

SDGsを採択した2015年の国連総会と同時に開催された民間セクター向けイベントで、米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、同社の事業を通じて世界のインターネット普及率を向上させ、雇用創出や貧困削減、教育に貢献していく姿勢を示しました。こうした企業の姿勢が投資家の資金を呼び込んでいます。

民間企業がESGに積極的に取り組む背景として、1つには、ビジネス機会の広がりが挙げられます。“ビジネスと持続可能な開発委員会”は、SDGsに関連したビジネス分野で年間約12兆ドルの価値を生み、2030年までに最大3億8,000万人の新規雇用を生み出すとしています。

同時に、ESGを意識した顧客や株主による商品・サービスに対する監視の目は年々厳しくなっています。気候変動への対応や企業統治などこれまでの商慣行を変えずにいると、規制が厳格化されるばかりでなく、顧客離れ、投資家離れも引き起こしかねず、中長期的にはビジネスの阻害になりかねない“リスク”として民間企業に意識され始めたのです。

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